高電圧マイクロキャパシタ

従来よりも高い電圧で安定に動作し、軽量化も可能

電気二重層キャパシタとは、電極の表面に正負のイオンが対になって並び、電解質イオンの吸脱着によって充放電をするデバイスです。二次電池のような化学反応を伴わないため、急速充放電ができ、劣化が少ないという特長があります。電気自動車用などに大型・大容量キャパシタの開発が進む一方で、小型家電製品・携帯電子機器・移動体通信などの用途には小さく軽量なキャパシタが必要とされています。

キャパシタの電極としてはこれまで、比表面積の大きな活性炭が使われてきました。しかし活性炭は粉末状なので、電極に成形するには導電性の結合剤が必要になります。
結合剤や活性炭表面の不純物、官能基は電極の劣化を早める働きがあるため、従来のキャパシタでは3 V以下の電圧しかかけられず、寿命が短いという問題がありました。

そこで私たちは、産総研エネルギー技術部門・名城大学と協力し、スーパーグロース法で合成した単層カーボンナノチューブ(CNT)でキャパシタ電極を作成し性能を確認しました。

スーパーグロース単層CNTは、繊維状であるため、結合剤を使わずに電極を成形できます。また、高純度であり、表面に官能基を付 加する原因となる触媒の除去工程を必要としません。さらに比表面積が大きく、導電性をもち、キャパシタ電極としては理想的な材料です。

キャパシタ電極走査型電子顕微鏡写真および試験用キャパシタの構造概念図
図1:キャパシタ電極の走査型電子顕微鏡写真。a)単層CNT電極、b)活性炭電極。
試験用キャパシタの構造概念図。c)集電体なし、d)集電体つき。

電極は、配向したスーパーグロースCNTを圧縮した後、電解液(テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム/炭酸プロピレン)に浸すことで高密度化して作製しました(図1a)。

また、従来のキャパシタ電極には、導電性を補い、充放電を補助するため、白金などを素材とする集電体が付属していましたが、スーパーグロースCNT 電極は十分な導電率を持つので、試験用キャパシタとして、集電体を使わない構造のもの(図1c)、および白金メッシュを集電体として用いたもの(図1d) の2種類を試作しました。

比較のため、活性炭YP17、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カーボンブラックを材料とした白金メッシュ集電体付の電極も作製しました(図1b)。電解液は単層CNT電極と同じものを用いました。

単層CNT電極(集電体つき)、単層CNT電極(集電体なし)、活性炭電極を用いた3種類の試作キャパシタの性能試験の結果は図2のとおりです。

3種のキャパシタ性能試験結果
図2:集電体つきの単層CNT電極(青)、集電体なしの単層CNT電極(赤)、活性炭電極(黒)のキャパシタ性能試験結果

単層CNT電極キャパシタはどちらも0~4 Vで安定した動作を示しました(図2a)。

次に定電流放電を行い(図2b)、比キャパシタンスすなわち単位重量当たりの静電容量(図2c)と、キャパシタ内部の電気抵抗を表すIRドロップ(図2d)を算出しました。単層CNT電極キャパシタはどちらも比キャパシタンスが活性炭電極より大きくなりました。また、IRドロップは活性炭電極より小さく、効率がよいことがわかりました。

集電体なしの単層CNT電極を用いたキャパシタのエネルギー密度は67 Wh/kg、パワー密度は93 kW/kg、集電体がある場合は、それぞれ94 Wh/kg、210 kW/kgでした。

さらに単層CNT電極キャパシタについては0~4 V、活性炭電極キャパシタについては0~3.5 Vの動作電圧で、1000回の充放電試験を行いました。単層CNT電極キャパシタは集電体の有無にかかわらず、キャパシタンスは3.6 %しか減少しませんでしたが、活性炭電極キャパシタでは46 %減少しました(図3)。

1000回充放電試験結果
図3:1000回充放電試験でのキャパシタンスの変化。集電体つきCNT電極キャパシタ(青)、集電体なしCNT電極キャパシタ(赤)、活性炭電極キャパシタ(黒)

今回の単層CNT電極をキャパシタデバイスに用いて、パッケージされた製品を作成した場合の性能を試算したところ、市販の電気二重層キャパシタデバイスよりも高いエネルギー密度(17 Wh/kg)、高いパワー密度(24 kW/kg)になりました(図4)。これは、集電体を必要としないのでデバイスを軽量化できることと、不純物を含まず比表面積の大きい単層CNTを使用することで動作電圧が上がったためです。

デバイスを作製した場合の性能推定値(従来品との比較)
図4:デバイスを作製した場合の性能推定値(従来品との比較)

一般にキャパシタは二次電池に比べてエネルギー密度が小さいのですが、今回の電極を使えば、重量当たりのエネルギー密度が市販の鉛二次電池と同程度 のデバイスを実現できる可能性があります。集電体を使用しないキャパシタは、軽量化に加えて、構造がシンプルなため製作工程を簡素化できます。さらに、電解液中に金属があることによる電解質の分解・劣化を防ぎ、長期間使用できるメリットもあります。

将来における携帯電話やモバイルPCなどの携帯電子機器やユビキタスデバイスへの応用を目指し、この高純度単層CNTキャパシタ電極を用いた、小型軽量なマイクロキャパシタ開発と、さらに高い電圧での動作の実現に向けて研究を続けています。

なお本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」研究領域における研究課題「自己組織プロセスにより創製された機能性・複合CNT素子による柔らかいナノMEMSデバイス」の一環として行われました。

参考:Izadi-Najafabadi et al., "Extracting the Full Potential of Single-Walled Carbon Nanotubes as Durable Supercapacitor Electrodes Operable at 4V with High Power and Energy Density", Advanced Materials, 22 (35), E235-E241 (2010)

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