導電性樹脂

少量のカーボンナノチューブ添加で樹脂やゴムの特性を保ったまま導電性を付与

導電性樹脂は近年、帯電防止や静電気除去、プリンターの帯電ロールなどさまざまな分野で応用されています。一般に導電性複合材料は、樹脂・ゴムや熱可塑性エラストマーに導電性材料であるカーボンブラックやカーボンファイバーなどを複合化して作製されます。しかし、10-3 S/cm程度の導電性を得るためにはカーボンブラックの場合、40~50重量%と多量に添加しなくてはなりません。

導電性材料のほとんどは樹脂・ゴムに比べて硬く、不透明なために、添加量が増加すると樹脂・ゴムのもつ本来の透明性や柔軟性は失われます。そのため、導電性材料の添加量をできる限り抑えて導電性を得ることが求められています。そこで、スーパーグロース法によって合成した単層カーボンナノチューブ(CNT)を母材中に添加する際、構造と分布を制御することによって、少ない添加量でも高い導電率を示す複合材料の開発を行いました。

導電性複合材料の光学顕微鏡写真
図1:導電性複合材料の光学顕微鏡写真。単層CNTを含む領域(導電領域)と単層CNTが全く含まれない領域(非導電領域)が形成されている。

まずスーパーグロース法で合成した単層CNTを有機溶媒中、または界面活性剤を含む水中で分散させます。すると、単層CNTは数10本束になったバンドルと呼ばれる構造から、綿状に広がった単層CNT同士が絡み合った100 µm程度の塊状の構造に変化します(図2)。この綿状の単層CNTに、有機溶媒で溶かした母材となるゴムもしくはゴムラテックスを加え、適切な条件で乾燥させました。

単層CNTの分散前・分散後
図2:単層CNTの分散の様子。(左)分散前、バンドル状。(右)分散後、綿状になる。

元来、単層CNT同士は凝集しようとする性質がありますが、アスペクト比が高いスーパーグロースCNTが絡み合い広がった構造では、多方向からお互いに引き合う力がつり合い、凝集を防ぎつつ、綿状のCNTを含む導電領域がつながりあってネットワークを形成します。

新しく開発した複合材料は、導電領域のネットワークが材料全体に広がっており、高い導電性を示します。一方、ネットワークの隙間には単層CNTを含まずゴムだけからなる非導電領域が存在するため、ゴム本来の柔軟性と透明性もほぼ保たれています。

これまでも単層CNTを用いて、少ない添加量で高い導電性を実現しようという試みがなされてきました。しかし、単層CNTが1本1本でばらばらに存在するような分散が理想的とされていたため(図3左)、分散工程で単層CNTが短く切断されてしまい、単層CNTによって導電経路が形成されるぎりぎりの濃度(パーコレーションしきい値)での導電率は10-5 S/cm前後にとどまっていました。

今回の開発では発想を転換して、ばらばらの単層CNTが均一に分散した構造ではなく、絡み合った長い単層CNTを含む導電領域と単層CNTを含まない非導電領域を混在させた構造とすることで(図3右)、母材本来の物性を保持しつつ、パーコレーションしきい値での導電率を10-3 S/cm、すなわちこれまでの100倍にまで向上させることができました。

この分散法は、ゴムだけでなくABS樹脂およびポリカーボネートにも適用でき、透明性が保たれることも確認しました。

樹脂中の単層CNTの構造 イメージ図
図3:樹脂中の単層CNTの構造(イメージ図)。黄色の矢印は電子の移動を表す。(左)単層CNTが独立して存在し、材料全体は絶縁体になっている。(右)単層CNTを含む導電領域[青枠]が連なることによって導電性を示す。また単層CNTを含まない領域があるため添加量の低減や樹脂の特性の保持が可能になる。

現在は実用化を目指し、より少ない添加量で導電性を示す材料の開発、さらに多様な樹脂への分散法、塗布膜からバルク体までのさまざまな成形方法などについて研究を続けています。

なお、この研究はNEDO「低炭素社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」の一環として行われました。

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