スーパーグロース法とは

高さ2.5mmのカーボンナノチューブ構造体 スーパーグロース法で合成された高さ2.5mmのCNT構造体

スーパーグロース法とは、当センター代表の畠らが2004年に発表した、革新的な単層カーボンナノチューブ(CNT)の合成技術です。

従来のCNTの合成法(注1)には、

  • 合成されるCNTは長くても数ミクロン程度で、合成効率が良くない
  • 不純物として触媒金属粒子やアモルファスカーボンが含まれる
  • マクロ構造体の作製が困難である

などの問題がありました。

私たちは、水分が触媒の活性時間と活性度を飛躍的に向上させることを発見しました。従来の化学気相成長(CVD)法の合成雰囲気に、ごく微量(ppm程度)の水分 を添加した結果、それまでの世界記録の500倍の長さ(ミリメートル程度)、時間効率では3000倍に達する超高効率成長を実現したのです。(注2)

この方法で合成されるCNTは、不純物が従来の2000分の1と超高純度で、配向性の極めて高い単層CNTです。また、成長基板上の触媒パターンを制御することで、容易にマクロ構造体を作成できる上、合成後、容易に基板とCNTを分離することができます。私たちは、CNT合成に関する問題の多くを一挙に解決したこの合成技術をスーパーグロース法と名付けました。

スーパーグロース法では、短時間で大量にCNTを合成できます。触媒効率が従来法の約100倍であることは、触媒使用量および製造コストの大幅な削減につながります。さらに、高純度で、成長基板からの分離が容易であるため、合成したCNTの品質を損なうことがなく、現在行われている複雑で高価な不純物除去プロセスが不要です。

つまり、スーパーグロース法はCNT生産の工業的展開に最も適しており、スケールアップにより、かつてない規模の高品質なCNTの量産が可能になるのです。

2004年スーパーグロース発表時の著者ら

従来のカーボンナノチューブ合成法との比較

触媒効率
合成法CNT/触媒(重量比%)
スーパーグロース 50000%
レーザーアブレーション 500%
HiPCo 300%
アルコールCVD 800%
気相流動 100%
不純物濃度(蛍光X線分析)
合成法不純物(重量比%)
スーパーグロース 0.013%
通常のCVD 17%
HiPCo 30%

注1:CNTの代表的な合成方法として、以下の3種類があります。

アーク放電法
ヘリウム、アルゴンなどの気体雰囲気中で、黒鉛棒の電極間にアーク放電を起こすと陰極側の堆積としてCNTが合成されます。黒鉛棒に金属触媒を混ぜると単層CNTができます。
レーザーアブレーション法
金属触媒を含む黒鉛棒および雰囲気ガスを電気炉で1000℃以上に加熱し、YAGレーザーパルスを黒鉛棒に照射して蒸発させ、CNTを合成します。
化学気相合成法(CVD法)
ナノサイズの遷移金属の触媒が存在する状態で、メタンやアセチレンなどのガスを800℃程度の比較的低温で反応させてCNTを得る 方法です。アルコールを炭素源とするアルコールCVD法、高圧条件下で触媒にペンタカルボニル鉄、炭素源に一酸化炭素を用いるHiPCO法、高温の気相中 に作り出した触媒微粒子からCNTを成長させる気相流動法も、CVD法に分類されます。

注2:2004年のスーパーグロース法公開時、10分間で高さ2.5mmのCNT構造体成長を記録していました。
参考文献
Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes
Kenji Hata, Don N. Futaba, Kohei Mizuno, Tatsunori Namai, Motoo Yumura, Sumio Iijima
SCIENCE, 306, 1362