ハイパワー酵素電極シール

過去最高の出力密度の果糖バイオ電池を試作(東北大学 西澤・梶研究室との共同研究)

バイオ電池
図1:果糖水溶液と新開発酵素電極シールを用いたバイオ電池(東北大学プレスリリースより)

私たちが共同研究をしている東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授の研究室では、酵素とカーボンナノチューブ(CNT)が均一に複合化した柔らかいフィルム(酵素電極シール)を開発し、このフィルムと果糖を用いて作製したバイオ電池で、過去最高の出力密度で発電することに成功しました(図1参照)。

酵素電極はバイオセンサやバイオ電池の中核部品として使われています。

最近の酵素電極として用いられている多孔性ナノ電極は、

  1. カーボン微粒子やCNTを焼き固める
  2. 酵素溶液を塗布・浸透する

という2工程で作られますが、酵素の担持が不十分で、脆く、変形できないものでした。

従来の作製法
図2:従来の酵素電極作製法。焼き固める前に酵素を浸透させることはできず、担持が不十分。

今回の研究では、比表面積が大きく長尺のスーパーグロースCNTフォレストを1mm×1mm ×0.012mmのフィルム状に成長させ、これを

  1. 酵素溶液に浸透させ、酵素の活性を保ったままマイルドに乾燥させる

という、1工程で十分に酵素が内包されるフィルムをつくりました。CNTフォレストではCNTの間隔が16nmあり、酵素のサイズ(3-10nm) が十分浸透しやすく、乾燥させるとフォレストが縮み酵素のサイズに合わせて間隔が自動的に調整されるという現象が起こることが確認されました。

スーパーグロースCNTフィルムを用いた酵素電極
図3:スーパーグロースCNTフォレストを使用した高性能酵素電極作製法

この原理で、果糖を酸化する酵素(フルクトースオキシダーゼ、FDH)を内包した電極シールをアノードに、酸素を還元する酵素(ラッカーゼ、 LAC)を内包した電極シールをカソードに用いたバイオ電池を作製しました。200mMの果糖水溶液に酸素を飽和させて発電実験を行ったところ、撹拌条件下で1.8mW/cm2という、過去の最高値を大きく上回る出力密度が得られました。

スーパーグロースCNTは高密度に酵素を保持し、また導電性があるため酵素との電気的接触の効率も良く、このような高性能になったと考えられます。

この酵素電極シールは柔軟なため、貼ったり巻いたりしても活性が落ちないことが確認されています。酵素電極は一般に酵素に寿命があるために一週間程度しか使えませんが、このシール電極は使い終わったらはがして交換するなど、いろいろな使い方が考えられます。

詳細は以下の資料をご覧ください。

参考:Takeo Miyake et al., "Self-Regulating Enzyme-Nanotube Ensemble Films and Their Application as Flexible Electrodes for Biofuel Cells", Journal of the American Chemical Society, 133, 5129-5134 (2011)