柔らかいカーボンナノチューブひずみセンサー

280%のひずみを測定でき、耐久性・応答性に優れ、クリープも小さい

CNTひずみセンサー
図1:CNTひずみセンサーの構造概略図(上)と膝の動きをモニタリングするデバイスとしての応用(下)

ウェアラブルデバイス、ユビキタスデバイスが注目されるに伴い、各種デバイスの微少化・軽量化が進む一方で、従来の硬く脆いシリコンデバイスとは異なる、柔らかいデバイスの開発も重要になってきています。

ひずみセンサーは材料の変形を測定・評価する以外に、ウェアラブルデバイスの一種であるデータグローブなど、人体の動きの検出にも用いられてきたデバイスです。しかし、従来の金属製ひずみセンサーでは検出できるひずみが5%程度までと小さく、人間の動作範囲を制限してしまうという問題がありました。

また、導電性材料と高分子との複合材料を用いたひずみセンサーは、100%程度までのひずみを検出できますが、急激なひずみに対してはクリープ変形が生じ、変形が安定してひずみが測定できるまでに100秒以上の時間がかかる上、デバイスとしての耐久性についてはこれまでほとんど検討されていません。

私たちは、スーパーグロース・カーボンナノチューブ(CNT)を用いて高密度配向CNTウエハーを作製し、デバイスへ応用する研究を続け、このCNTウエハーを、柔らかい基板の任意の位置に、任意の配向方向で貼り付ける技術を開発しました。この技術は、CNTと伸縮性のある高分子基板を組み合わせた様々な柔らかいデバイスの作製を可能にする画期的な技術です。

さらに、スーパーグロースCNTを分散させた導電性ゴムを使用した、柔らかい電極を新たに開発しました。これらの技術を組み合わせて、電極も含めて デバイス全体が伸縮できるひずみセンサーを作製しました(図2)。いろいろなサイズのセンサーを作ることができますが、今回作製したものの中で最大のデバイスは15cm×5cmの大きさがあります。

CNTウエハー作製法
図2:CNTひずみセンサー作製法(1)シリコン基板上に触媒を線状にパターニングして合成した垂直配向単層CNTフィルムをシリコン基板からはがす(2)伸縮性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS:シリコンゴムの一種)基板上に、CNTの配向方向がひずみの方向と直行するように並べる(3)イソプロピルアルコール(IPA)にひたし配向単層CNTを高密度化して、ファンデルワールス力により基板と接着させる(4)スーパーグロースCNTを分散させた導電性ゴムとPDMSを使った接着剤を用いて開発した、変形しても特性の変わらない柔らかい電極をCNTひずみセンサーの両端に取り付ける

カーボンナノチューブひずみセンサーの特性

配向したCNTを用いたひずみセンサーは最大280 %ひずみを測定できました(図3a)。従来の金属製ひずみセンサーでは5 %程度のひずみ測定しかできませんでした。無配向のCNTを用いたひずみセンサーでは、このような大きなひずみは測定できません。

図3bに示すように、1度目にひずみを与えたとき(図3b赤線)と、2度目以降(図3b青線)ではひずみに対し、異なる電気抵抗の変化を示し、2度目以降のひずみでは、傾きの異なる二つの線形領域を持ちます。

また、150 %までのひずみに対して1万回以上の繰り返し耐久性を示し、急激な100 %のひずみに対しても、3 %程度のクリープしか生じず、それもわずか5秒程で安定しました。このひずみセンサーは100 %程度のひずみを測定できる導電性材料と高分子との複合材料 (クリープ量:8.8 %、減衰:100秒以上、文献値)と比べると、クリープ量も少なくその減衰も早いとわかりました。またひずみに対する応答性も非常に高速で、わずかに14 ms程度の遅れで追随できます。

CNTウエハー作製法
図3:柔らかいCNTひずみセンサーの特性。特性試験は全て室温で行った。

試作デバイス

CNTひずみセンサーを使って呼吸・発声・手の動き・足の動きをモニタリングするデバイスを試作しました(図4)。

膝の動きをモニタリングするタイツ(図4a)では、膝を曲げるとひずみが加わって電気抵抗が大きくなり、伸ばすとひずみが解放され電気抵抗が小さく なるという、足の動きに伴う電気抵抗の変化が検出できました(図4b)。また、ジャンプをするための膝の素早い屈伸動作と、着地に伴う衝撃を吸収する動作も検出できました。

また、手袋の指それぞれにCNTひずみセンサーを取り付けた後(図4c)、指を動かすと各指の形状をすべて判別でき、データグローブとして利用の可能性を確認することができました(図4d)。

CNTひずみセンサーは、人体の素早く、大きな動きも測定できる上、デバイスとしての耐久性に優れており、このタイツや手袋は複数の人間が繰り返し利用することも可能で、ウェアラブルデバイスへの応用が可能と考えています。
例えば医療分野において、リハビリテーションの際に患者の動きを妨げずにモニタリングすることや、呼吸モニターやデータグローブとして使用することができるでしょう。また、コンピューターゲームの入力装置として、レクリエーション分野への応用も考えられます。将来は企業などとの連携を進め、デバイスの実用化研究を進めようとしております。

CNTウエハー作製法
図4:CNTひずみセンサーを利用した膝や手指の動きのモニタリング

この研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」研究領域における研究課題「自己組織プロセスにより創製された機能性・複合CNT素子による柔らかいナノMEMSデバイス」の一環として行われました。

参考:Takeo Yamada et al., "A stretchable Carbon Nanotube Strain Sensor for Human Motion Detection", Nature Nanotechnology, doi: 10.1038/nnano.2011.36 Published online 27 March 2011

このデバイスに関する詳細のお問い合わせはこちらからお願いします。