集積三次元カーボンナノチューブデバイス技術

CNT三次元配線 図1:CNT三次元配線

カーボンナノチューブ(CNT)は強靭性、高導電性、柔軟性、異方性、低次元性、低摩擦性など、微小デバイスにとって理想的な特性を持ち、世界中で盛んに研究されています。これまでに、単一のCNTを用いた不揮発性メモリ、スイッチ、センサー、ナノ・ピンセット、チューナブル共振器などの報告がされましたが、設計通り所定の位置に所定の形状で加工する技術がなかったために、大量に作ったデバイスの中から偶然にうまくいったデバイスを選びその特性を評価していました。しかし、CNTデバイスを私たちの身近な存在として使用するためには、工業製品として多数のデバイスを一度に集積作製することが必要です。

右上の写真(図1)は、CNTで作った3次元配線です。私たちの開発したスーパーグロース法及びCNT高密度化法と、半導体のリソグラフィー技術を融合することで、写真のようなCNT3次元デバイスの作製と集積化が可能になりました。

カーボンナノチューブ・ウエハーの作製

CNTウエハーは、スーパーグロース法によって合成されたCNTフィルムにCNT高密度化法を施して作製する、高密度のCNTが向きをそろえて並んだ板状の材料です。

この素材は、リソグラフィーに耐えうる強度があり、これまでのシリコン半導体微細加工技術をそのまま適用して微細な構造を設計通りに作製することが できます。これにより、CNTデバイスを集積化し、同じ機能を持ったデバイスを大量に作製することが可能になります。

CNTウエハーは次のように作製します。(図2)

  1. シリコン基板上に触媒を線状にパターニングする。
  2. スーパーグロース法を用いて、シリコン基板上に垂直配向CNTフィルムを作製する。
  3. 基板を液体に浸し、引き上げることにより、CNTフィルムを基板上に倒す。
  4. 密度の低いCNTフィルムは、液体の乾燥とともに表面張力によって高密度化され、基板に密着してCNTウエハーとなる。
CNTウエハー作製法 図2:CNTウエハー作製法
カーボンナノチューブ・ウエハーの性質
  • 高密度化する前の長さ(ミリメートル程度)、純度(99.9%以上)、比表面積(約1000m2/g)、配向性を保つ
  • 密度は0.03g/cm3から0.5g/cm3に高密度化される
  • 軽量で強靭かつ柔軟性があり、90度以上曲げても断線しない
  • 抵抗率に異方性を持つ(配向方向に並行:0.008Ω・cm、配向方向に垂直:0.20Ω・cm)
  • シリコンを上回る共振周波数を示すことが期待される

3次元構造の作製

リソグラフィー技術によって両持ち梁(ビーム)や片持ち梁(カンチレバー)など、さまざまな微細構造体を作製できます(図3)。具体的には、CNTウエハーにレジストを塗布し、電子線描画装置を用いて露光・現像して、マスクを作製します。これに、酸素プラズマを用いてCNTウェハーをエッチング(不要部分を除去)し、その後、レジスト・マスクを除去することによって、形状を任意に加工します。

島状CNT構造 二次元カンチレバー
CNTビームとシート 三次元カンチレバー
図3:様々なCNTウエハー構造体。(左上:島状CNT構造、右上:二次元CNTカンチレバー、左下:シリコンピラー上のCNTビームとCNTシート、右下:三次元CNTカンチレバー)

実際に動作するカーボンナノチューブ・デバイス

CNT構造体は、導電性を利用した電気駆動が可能です。微小電気機械デバイス応用の一例として、すべての電極がCNTからなるCNTリレースイッチを作製し駆動させました。(図4)

CNTリレースイッチ 図4:集積化されたデバイス(CNTリレースイッチ)構造のレーザー顕微鏡画像および電子顕微鏡画像。410x310μm中に1276個のデバイスを集積させた。

この研究成果は、2008年5月、Nature Nanotechnologyオンライン版にて発表しました。
プレスリリース:自由自在に設計したカーボンナノチューブ3次元デバイスを実現