{お断り}バックナンバー「日々是研究(畠通信)」は公開当時のままの文章を掲載し、新たな加筆修正は行っていません。ただし、公開より時間が経ち、当時の写真や参照記事へアクセスできない状態になってしまっているためリンクは削除してあります。

 

畠通信:今年の締めくくり(2013年12月27日)

今年最後の書き込みになります。今年は出向した⼭⽥さんがチーム⻑として戻り、私がチーム⻑から引退し、ドンチーム⻑・⼭⽥チーム⻑の下でチームの運営が⾏われた初年度になりました。私⾃⾝も、ありとあらゆる⽅⾯において権限移譲、仕事の譲渡、各研究員の教育ということを⾮常に⼼がけた⼀年でした。数年前までは、私がいないと様々なことが立ち往⽣してしまいましたが、今では私がいなくても物事がスムーズに動くように、少しずつ変わってきた気がします。来年はこの勢いをさらに加速させて、私がいつ「透明⼈間」になっても、誰も気づかずにそのままチームが運営される状態を⽬指します。たしか、数年前に理想のチーム⻑とはそのようなもの

だという書き込みをした記憶があります。⼤分理想に近づいてきました。スーパーグロース法を発⾒し、ほぼ10年をかけて技術開発をしてきたわけ ですが、来年は、マラソンに例えるならばおそらく折り返し地点、実⽤化が決定され本格的に始動する初年度になるでしょう。それに伴い、仕事もまた変化するように思います。今までは拡張路線で、仕事も⼈もどんどん増えてきましたが、折り返し地点をすぎるとやるべきことが明確になってくるため、⽬標を絞ってスピードアップし、⼀気に駆け抜けていきたいところです。そういう意味で、来年は節⽬の年になるでしょう。それでは皆様、よいお年を。

 

畠通信:デービスさん滞在(2013年12月24日)

11⽉から、アメリカよりサバティカルでお客様が来られました。相⼿はなんと、ロバート・デービスさん。なぜ「なんと」なのかと⾔いますと、デービスさんは数年前に⼀度サバティカルで来られているからです。⼆回連続で同じところというのは、結構珍しいケースなんじゃないでしょうか。ご本⼈は⼦沢⼭な⽅ですが(私は合計で何⼈かも覚えきれません)皆さん⼤の⽇本贔屓ということもあって、また来られたそうです。前回はカーボンナノチューブの合成をやりたくていらしたのですが、ちょうど当時は⽇本ゼオンさんと量産技術を⼀緒に開発していたため、合成の技術はお伝えすることができず、デバイスの仕事をやりました。今回は、合成技術開発も⼀段落し、基礎的なところは公開可能になっているので、合成まわりの仕事を⼀緒にやることにしました。ともかく頭が良くて優秀で、⼈柄も良い⽅なので、きっとチームのみんなが学ぶことも多いでしょう。

 

畠通信:CREST・GNCプロジェクト最終報告会(2013年12月20日)

あっというまに年の瀬ですね。仕事をなるべく減らしている私ですが、師⾛はそれなりに忙しくなってしまいます。不思議なものです。特に今年はCRESTの最終報告会と、GNCの最終報告会が相次いで⾏われました。忙しいとは⾔っても、昔よりも研究員のみんなが格段に成⻑していますので、各テーマ、パートで分担をきめて研究員に案を出して頂き、2、3回やりとりすると完成度の高いスライドが出来上がってきます。それらを並び替えて、つなぎの⾔葉を入れれば、プレゼンテーション資料があっというまに完成です。皆様のご協⼒を頂いて、おかげさまで無事に最終報告会を2つとも乗り越えました。これを読んでいる、各プロジェクトの研究をやってくれたチームの皆様、本当に長い間ありがとうございました。

 

畠通信:企業での講演を増やしています(2013年12月12日)

実は最近、あちらこちらの企業に出向いたり、企業の⽅に来ていただいて⻑時間の講演をしたりすることが多々ありまして、そのような場でひたすらに宣伝活動に勤しんでいる次第です。今まで何社にお伺いして、講演したか覚えていませんが、お遍路さんにちなんで、「48社」回ったら、きっとスーパーグロースが華々しく実⽤化され、私は引退してもよくなるのではと、勝⼿に周囲に⾔いふらしています。

 

畠通信:オープンラボ(2013年12月9日)

オープンラボも無事、⼤盛況のうちに終わりました。我々の展⽰は産総研内のポスター賞を頂きました。⼀所懸命頑張ってくれたチームの方々、説明に⽴ってくれたチーム員の皆様、どうもありがとうございます。以前は、オープンラボでなるべく広く、たくさんの企業の⽅にスーパーグロースCNTを知っていただくことを⼼掛けていたのですが、我々チームの戦略も変化しつつあり、オープンラボで宣伝するフェーズは過ぎたかなあと思っています。現在は、どのような市場を⽬指すのか、最初にどのような⽤途開発をするのか、かなり明確になってきており、不特定多数の方々に宣伝するよりも、ピンポイントで絞ったターゲットに向け、こちらから売り込みに行った⽅がよさそうだと考えています。と、偉そうに⾔っていますが、この戦略は全部友納さんからの受け売りです。⻑年、企業で場数を踏んできた超⼀流の⽅は、さすが、考え⽅が⼀段も⼆段も冴えています。

 

畠通信:江刺先⽣ファン(2013年12月5日)

この通信にも何度か書いていますが、実は江刺先⽣とは以前から親しくさせていただいております。つくばイノベーションアリーナが立ち上がる前、産総研さくら館奥の和室で、真夜中に各界の幹部が集まってワイワイお酒を飲んでいる席で、先⽣に、「実は私は先⽣のファンなんです」と宣⾔をして以来、ことあるごとにお声をかけていただき、ご厚情を賜っています。今回も先⽣のご発⾔、ご案内してくださった中に、江刺先⽣の教育者としての思い、後に続く若者達に様々なものを伝えていこうという思いを強く感じて、⼀層ファンになってしまいました。⻄澤記念センターには江刺先⽣の博物館のようなものもあり、何⼗年もかけて集めてきた古い(⾻董品のような)昔のエレクトロニクスや、江刺先⽣が⻑年開発してきたMEMSが陳列されていて、そこでもひとつずつ丁寧に色々と教えていただきました。江刺先⽣はじめ⽥中研究室の皆様、本当にありがとうございました。⼤変楽しい⼀⽇になりました。

 

畠通信:専⽤クリーンウェア(2013年12月2日)

最も印象に残ったことのひとつは、クリーンルームの中にあった、江刺先⽣専⽤の真っ⾚なクリーンウェアです。還暦のお祝いとして、皆さんが特注品をプレゼントしたらしいのですが、これがとても格好良く、まるでシャア専⽤機の赤いモビルスーツみたいです。しかもクリーンルーム内を超早⾜のスピードで走り回って見学させていただいたので、⽂字通り「3倍のスピードで動く」シャアのようでした。唯⼀の⼼残りは赤いシャアの江刺先⽣と⼀緒の写真を撮り損ねてしまったことでしょうか。

 

畠通信:東北⼤学⽥中(秀)研究室訪問(2013年11月29日)

またまた⼤変ご無沙汰してすみません。最近はなんだかんだとバタバタ忙しくしています。備忘録代わりにこの2か⽉間の出来事をまとめておきます。もう⼤分前になりますが、MEMSに関する⽇本の中⼼拠点である東北⼤学⽥中研究室(旧江刺・⽥中研究室)へ、⼀⽇かけて訪れました。朝⼀番から江刺先⽣が直々にお出迎えくださり、⻄澤記念センターで最近のご活動などをお教えくださり、クリーンルームを案内してくださいました。そして御⾃ら⾞を走らせ、我々メンバーに美味しい⽜タンを振舞ってくださいました。午後は私がカーボンナノチューブ銅での連携についてひとしきり講演をした後、また先⽣の運転で、今度はお寿司屋さんで⼣⾷をご馳⾛になった上、お菓⼦のお⼟産まで頂きました。朝から晩まで丸⼀⽇、⾝に余る歓待を受け、⼤感動と⼤感銘の嵐の中、新幹線で帰路に着きました。

 

畠通信:フランクリン⽒の講演の後に(2013年10月18日)

フランクリン⽒は若く、熱い⼼と明晰な頭脳でしっかりとしたビジョンを描き、強い決⼼を持って前に進んでいるので、もしかしたら事を成し得るかもしれないと思いました。大きな仕事を成し遂げるためには、これらの要件が絶対不可⽋だとスーパーグロースCNTの経験からそう感じているからです。講演後にも彼と話しました。彼も当チームの研究をよく知っているよう で、「今度スーパーグロースCNTが実⽤化されるよ。カーボンナノチューブが発⾒されてから20年かかったけれど、やっとここまできたよ」と話すと彼も喜んでくれました。そして、「君の夢も10年、20年後に叶うといいね」と⾔ってお別れしました。

 

畠通信:IBMフランクリン⽒の講演(2013年10月15日)

IBMがカーボンナノチューブトランジスタで⽬指しているのは、まさに王道中の王道、シリコンCMOSデバイスの置き換えです。過去半世紀にわたり、化合物半導体をはじめ様々な材料が挑み、そして敗れ去っていった、最も困難ともいえるテーマに敢えて立ち向かって⾏きますか、IBM!講演ではその根拠について1時間ほど説明されましたが 、⾮常に説得⼒のある構成で、なるほど、可能性はあるかもしれないと思わせる内容で、⼤変満⾜しました。チャネル⻑10nmで作成されたトランジスタでは、CNTが最も良い性能を示しているということなどが紹介されました。もちろん課題は多々あります。CNTには⾦属型と半導体型があるのですが、半導体型の純度をシックスナイン(99.9999%)まで上げなくてはいけなのは大きな課題のひとつでしょうし、あまり表には出てきませんが接触抵抗の問題もあります。しかし、年ごとの課題推移をグラフで示し、現状の技術開発トレンドが継続すれば2020年にこれらの課題が解決すると⾒せる⼿法はいかにも半導体メーカーらしいものでした。当チームで半導体型CNTの選択的成⻑をやっている研究員が「どうやってシックスナインを達成するんですか」と質問をしたところ、「それは君が達成するんだよ」と⾔われて、ごもっとも、というところでした。

 

畠通信:IBMのナノカーボン研究(2013年10月10日)

IBMのカーボンナノチューブトランジスタのチームを率いているAaron Franklinさんの産総研での講演を聴きに⾏ってまいりました。IBMのナノカーボン 研究といえばフェードン・アブリースが有名ですが、彼は現在では完全にカーボンナノチューブからは引退し、フランクリン⽒がチームを牽引しているとのことです。まずはつかつかと歩み寄り、「今IBMはグラフェンとカーボンナノチューブのどっちを⼀⽣懸命やっているの?」と、初対⾯なのにぬけぬけと図々しい質問をします。すると「カーボンナノチューブは12⼈くらいで、グラフェンの倍のメンバーだよ。IBMはカーボンナノチューブに⼒を入れている」という回答でした。IBMがグラフェン研究の⼿を緩め、CNT研究を真剣にやっていると噂で聞いていましたが、それを裏付ける回答でした。それで、「なぜCNTを⼀⽣懸命やっているの?」と訊くと「うん、それがまさしく講演の中⾝だからこれから聴いておくれ」と⾔われました。なんと野暮な質問をしてしまったのでしょう。その後、IBMのカーボンナノチューブトランジスタの最新の研究についてたっぷりと知ることができました。

 

畠通信:来年度の研究体制(2013年10月7日)

毎年秋のこの時期には、予算編成やチームの来年度の体制を決めるための熟考が必要です。9⽉に経産省の幹部が交代し、様々な⽅向転換があったため、ずっと経産省やNEDOからの宿題漬けの日々が続いております。愚痴めいてしまいましたが、先々の新しい研究内容について考えていくための良い機会だと思い、研究員たちとブレーンストーミングを重ね、徐々に来年度の研究テーマや体制が⾒えてきました。⽇本ゼオンさんが⼯場の設計に入ったということで、かなり高い確率でスーパーグロースCNTが実⽤化されますから、実⽤化後の展開についても注⼒していかなければなりません。ブレーンストーミングこそが私の主たる仕事であり、これをやっているときは結構楽しかったりします。

 

畠通信:ゴムの⾦型微細加⼯プレス発表(2013年10月3日)

少し前に、カーボンナノチューブを加えたゴムの、⾦型による微細加⼯に関するプレス発表を⾏いました。ゴムは極めて柔らかい材料ですので、従来は微細な構造を作ろうとしてもゴムが固まる際に変形し、型通りの精密な構造は作れなかったのですが、そこにわずか1%のスーパーグロースCNTを入れると、いわば鉄筋コンクリートのように、⻑尺のカーボンナノチューブがゴムの中で構造を支え、おおよそどんな構造でも⾃由⾃在に型取りできるという性質になります。出来上がった構造をゴムの専⾨家にお見せすると、⽬を⾒張ってびっくりされるような成果ですが、今まで全く存在しなかった技術なので、誰も彼もが「何に使えるかわからない、しかしすごい」という反応をされます。いったい何に使えるか、お知恵を拝借しつつ研究を進められたらとプレス発表をしました。皆様のご連絡をお待ちしております。

 

畠通信:CNT銅複合材料(その4)(2013年9月24日)

そんな難産の論⽂とプレス発表だったのですが、発表初⽇からの3⽇間で、ホームページのアクセス件数が3000件と、我々のプレス発表で過去最多を記録し(1000件を超えると注⽬度が⾼いということで産総研広報から連絡が来ます)、世の中の関⼼の⾼さがうかがえます。実際に⽇本の⼤⼿電線メーカー、⾦属メーカー、⾃動⾞メーカーなどから相次いでお問い合わせを頂き、これからしばらく、この材料をどう発展させていくのかを⾒極めるために⽇本中の方々にお会いしに行くことになるでしょう。実⽤化するまでにはまだまだ、課題や難題が⼭積みですが、⻑丁場になっても⼀緒に開発してきたいという⽅がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

 

畠通信:CNT銅複合材料(その3)(2013年9月20日)

さて研究成果は素晴らしいのですが、論⽂が受理されるまでは、これまた⻑きにわたる困難なさすらいの道のりでした。Natureは編集者にキックされ、Science、Nature Materialsもキックされ、Nature Nanotechnologyではメカニズムの説明が⾜りないと⾔われて審査員のところで落ちました。説明を追加してNature Communicationsにトライするも、なぜか編集者が即決してくれず、審査員が6⼈ほどついて、3度以上の改訂をした、私個⼈としては史上最⼤の苦闘でした。最後は、ある審査員が「そもそも許容電流密度は物性値ではないので意味がない」と⾔い出す始末で、哲学論争にまで発展しかねない状況でしたが、なんとか採択されました。

 

畠通信:CNT銅複合材料(その2)(2013年9月17日)

複合材料を作ると、⼤抵、両者の良い所取りにはならず、よくて分量に比例した特性が出るか、悪ければいとも簡単に両者の⽋点を合わせたものになるのですが、今回はなぜか、「共有結合が強くて電流を沢⼭流せる」という炭素系材料の特⻑と、「⾦属結合で導電性が⾼い」という銅の特⻑を合わせることに成功してしまいました。驚きです!逆に炭素材料の「半⾦属で導電性が低い」ところと、⾦属の「柔らかく電⼦が⾃由に動くためエレクトロマイグレーションが起き、あまり電流が流せない」という、悪いところ同⼠があわさらなくてよかった、よかった。この研究成果は、カーボンナノチューブの使い道に新しい展開をもたらすのみならず、上記したように従来の常識を⼤きくくつがえすもので、複合材料の新しい学問的なフィールドの展開が期待されます。

 

畠通信:CNT銅複合材料(その1)(2013年9月13日)

さかのぼりまして7⽉下旬に、カーボンナノチューブと銅を複合させて、銅並みの導電性を持ちながら100倍の電流密度を実現した材料に関する論⽂がNature Communicationsに掲載され、あわせてプレス発表を⾏いました。この研究成果、実はかなりすごいと自負していますが、ここに至るまでには4年間、いえ、それ以上の時間がかかっています。その間、忍耐強くこの仕事を完成させたスブさん、おめでとうございます。これで良いポジションを得て無事インドに帰れますね。ほっとひと安⼼です。

 

畠通信:実⽤化推進研究会(その4)(2013年9月11日)

今回、私が個⼈的に⼀番注⽬した発表は、⽇本ゼオンの荒川⽒による発表です。⽇機装において気相流動法によるカーボンナノチューブの開発に携わったことから始まる、カーボンナノチューブへの昔からの熱い気持ちと実⽤化への意気込みを語ってくれました。しかもその上、なんと講演 の最後に、「⽇本ゼオンは先週からスーパーグロース法の⼯場の設計に入りました」という爆弾発⾔。この通信にこれを書いたらマズいかもしれない、というくらいのきわどい危険球です。まだ正式に決定しているものではありませんが、いよいよスーパーグロース法のカーボンナノチューブが本格的に社会に出回るのも時間の問題となってまいりました。ご期待ください。現場にいる私は、地響きをあげて物事が動いていく様を感じています。きっと大きなことになるという、そんな予感がします。⼯場が建ち、大きな産業が育てば、⽇本国⺠の⾎税を使った研究開発の成果を国⺠に還元できるだけでなく、技術開発にかかわってきた多くの仲間たちの労が報われると思います。そして私も今⽣での大きな責務をひとつ果たしたことになるでしょうか。

 

畠通信:実⽤化推進研究会(その3)(2013年9月9日)

第1回ナノカーボン実⽤化推進研究会は、昨年から我々の研究室で活躍してくれている友納招聘研究員が何カ⽉もかけ、⽇本中を行脚して、関係者の気持ちをひとつにしたことで、初めて無事に開催されたと思っています。本当にお疲れ様でした。こんなにパーフェクトに事が運ぶとは、私も予想していませんでした。今まで、カーボンナノチューブの⽤途開発をしている企業の⽅が集う場が少なかった というご意⾒も⽿にしました。ナノチューブ学会はアカデミックな研究発表が多く、企業の方々はあまり⾜を運ばれないということです。しかし今やカーボンナノチューブの様々な⽤途開発が⾏われ、世の中に出回ろうとする、産声を上げる前の状態で、企業でも状況は刻⼀刻と動いているのでしょう。そのような状況であるからこそ、多くの方々のご協⼒のもとに、この実⽤化推進研究会が実現されたと思います。研究会では、私が出るとスーパーグロースの⾊合いが強くなってしまうため、⿊⾐に徹し、陰ながら協⼒させていただきましが、ともあれ、開催の成功をとてもうれしく思っています。

 

畠通信:実⽤化推進研究会(その2)(2013年9月5日)

企業の皆様も⼤変熱のこもったプレゼンテーションをされました。通常、企業の方々は社外秘事項が多く、差しさわりのないことしか発表できないため、私としてはちょっとつまらないと感じることもあるのですが(ごめんなさい)、今回は全員「気合入りまくり」で、どう見てもギリギリ、本当のギリギリの線でしょう、というところまで語ってくださいました。何年も開発現場を率いてきた責任者の⽅ばかりで、どのプレゼンテーションも⾮常興味深く拝聴させていただきました。このナノカー ボン実⽤化推進研究会は、来年2⽉、フラーレン・ナノチューブ・グラフェンシンポジウムの後に、東⼤で第2回が⾏われることが決定していますので、さらに参加者が増えると期待しています。

 

畠通信:実⽤化推進研究会(その1)(2013年9月2日)

だいぶ間があいてしまってすみません。夏の間サボっていました。が、とりあえず⽣きております。しばらく前になりますが、8⽉の初頭に第1回ナノカーボン実⽤化推進研究会が開催されました。お盆前、猛暑の⼤阪での開催でしたから、私は参加者100⼈と予想していましたが、飯島先⽣の挨拶に続き、⽇本を代表するカーボンナノチューブの⽤途開発メーカーの開発責任者がずらりとならび、そしてトリが信州⼤学の遠藤先⽣の講演という、オールジャパン、最強の布陣のプログラムに、我々の予想を⼤幅に上回る、180⼈もの方々が参加されました。会場のキャパシティもちょうど180⼈で、満員の会場は熱気にあふれ、司会として最前列にいた友納さんは、皆の熱い視線をひしひしと感じた、と興奮顔でした。

 

畠通信:内閣府政務官視察(2013年7月2日)

内閣府政務官の⼭際⼤志郎⽒が視察にこられました。政務官というのは、⼤⾂、副⼤⾂に次ぐ要職。ナンバー3です。当然国会議員です。普段の視察では、私は現場で説明をしてバスを⾒送り終了となるのですが、今回は、視察後にマイクロバスに乗り込み、理事等もまじえた意⾒交換会へ初参加しました。最後にバスに乗り込んだ私を待っていた、唯⼀の空席は、政務官の横。どうみても変だぞ、マイクロバスに乗っている⼈は産総研の幹部ばかりで、私は圧倒的に下っ端。いいのか産総研、これで(笑)。仕⽅がないので、バス中の⼈が⽿をそばだてている中、ほんの5分ぐらいの時間ですが 、政務官が東⼤で農学部の博⼠をとっていることを事前に知っていたのでそれを切り⼝にいろいろ雑談しました。それでわかったことを公開しちゃいましょう。1. 鯨のDNAを調べて進化の系譜を研究されていたらしい、2. 東⼤の図書館には、⼤英帝国図書館と東⼤図書館にしかない17世紀までさかのぼる古い⽂献があるらしい、3. ジャージとスリッパ姿で生活し、農学部のキャンパスが弥⽣キャンパスとよばれていたため、⾃分たちのことを原始⼈と称していたらしい以上です。我ながらすごい&どうでもいい情報収集能⼒です(笑)

 

畠通信:今年を振り返って(2011年12月28日)

今年最後の畠通信ということで、今年を振り返って最も印象に残った事柄を書きとめておきたいと思います。まず、⼀番は何といっても夏過ぎから始めている⼼の育成への取り組みです。全ての⽣きとし⽣けるものは最 終的には⾃分が幸せになるために⽣きていると思います。そしてその幸せを決めるものは何かといえば、⼼です。たとえ幸せたるに⼗分な状況の中でも、⾃分の⼼が幸せでなければ幸せにはなりません。逆も真なり。そういう意味で⼼の育成をはじめて、私⾃⾝の幸せ度は格段にアップしました。来年もよりいっそう⼼の育成に取り組んでいくつもりです。⼆番⽬は断捨離です。断捨離の根本思想は、⾃分の⾝の回りの物に限らず、研究テーマ、⼈間関係、⼼の中に入れているものまで全て整理整頓し、INGで⾃分とつながっているものだけを残すというものです。⼼の修⾏と同時に断捨離を様々なものに関して実⾏しており、家の中、⼼の中、はたまた研究室まで、前と比較して整理整頓されつつあり、気持ちの⾵通しも良くなり、⾮常に快適になりました。ブログの中では詳細を書く時間がなかったのですが、また来年にで

も詳しく紹介したいと思いますし、来年も継続して取り組んでいくつもりです。研究に関わるブログですので、三番⽬くらいには研究に関する話題を。TASCのプ ロジェクトが⼆年⽬に入り、キャパシタプロジェクトが終了し、いよいよ実証プラントによるスーパーグロースCNTサンプルの本格的な配布が始まります。スーパーグロースの研究もひとつのフェーズを過ぎ、死の⾕を越え、実⽤化への対岸が遠くに⾒えてきたところであると感じています。まだまだ実⽤化の対岸にたどりついてはいないので、気が抜けるわけではなく、来年以降もより⼀層真摯な取り組みが必要であることには、なんら変わりはありません。最後に今年は、震災、夏場の節電など、研究室の皆様にとっては、苦難の多い年になりました。苦しい状況でも、元気に、前向きに取り組んでいただき、例年と変わらず、いや、例年以上に多くの成果を⽣み出した研究室の皆様に深い感謝の意を示して、今年を結びの⾔葉としたいと思います。「皆様今年も精⼀杯精進し、ついてきてくれて、どうもありがとう」。

 

畠通信:元⻑期ビジョンチーム忘年会(2011年12月26日)

年の瀬に、元⻑期ビジョンチームのメンバー数名と東京で忘年会をいたしました。集まった⻑期ビジョンのコアメンバーの皆さんは、ユニット⻑や企画本部総括主幹などすっかり偉くなり、未だ現場にはりついているのは私だけという状況です。経産省か ら出向され、⻑期ビジョンチームを率いていた⽅とお会いするのも久しぶりでした。彼は、今まさしく原発事故対応の仕事をされています。興味深かったのは、この事故を受けても、世界中で⼆カ国を除いて、各国の原発・エネルギー政策には大きな変化がないというお話でした。今回の事故は⽇本固有の事情で⽣じた事故だと、世界は見ているというのです。固有の問題として、東電の尊⼤さと、⾸相のリーダーシップのなさ、それらに起因する危機管理能⼒の⽢さと、⾸相官邸と保安院のホットラインの⽋如を挙げられました。例えば、⾸相がテレビで公に保安院や経産省の⾏動を非難したが故に、本来、事態を管理監督する責任を持っている保安院が、事故の原因・張本⼈であると世間から悪者扱いされ、事態の収集を著しく困難にしたそうです。⾸相は保安院のいわば上司ですから、上司が部下を⼤衆の⾯前でけなし、部下達のやる気を著しく削いだと見ることもできますでしょう。⾸相のサポートと連絡があれば、千⼈もの専⾨家部隊がすぐにでも動けたのに、と悔しそうに⾔っていたのが印象的でした。

 

畠通信:保⽥さんの結婚式(2011年12月22日)

寒い東京で、当チームの元研究員で、今は北海道⼤学講師の保⽥さんの結婚式が⾏われました。

昔、居室を複数のチームと共同で使っていたのですが、その当時、他のチームに所属していた「雑居部屋のアイドル」とめでたくゴールインです。普段は研究員のプライベートにはあまり⽴ち⼊らないのですが、結婚式で周りの⽅から色々話を聞くと、雑居部屋の多くの独⾝男性が彼⼥にアタックし、破れ去っていったそうです。その累々たる敗者の中で勝ち残ったのが保⽥君。というわけでおめでとうございます。結婚式会場にはアリさんや⻄野君など、昔の研究室のメンバーも 顔を出しており、早⽔君の訪問ともあいまって、奇遇にも1週間のうちに4、5年前の研究室の主要メンバーのほとんどと会ったことになりました。みなさんそれぞれ、ちょっとだけお年を召して、ちょっとだけ⽴派になって、ちょっとだけ貫 禄がついて、でも元気そうにエネルギッシュに活躍している様⼦が感じられ、とてもうれしく思いました。

 

畠通信:David Geohegan博⼠来訪(2011年12月19日)

筑波⼤学でTIA関連のシンポジウムが開催されました。TIAなので幅広い分野から様々な講演者が招かれていましたが、カーボンナノチューブ分野の招待講演者は、オークリッジ国⽴研究所のDavid Geohegan博⼠と私でした。Daveとは昔からの知り合いで、「この機会に是⾮研究室に来ませんか」と呼び掛けたところ「行く行く」との返事。半⽇かけて講演をしてもらい、研究室の案内をし、夜は焼⿃屋で乾杯しました(私は飲みませんけれど)。Daveは典型的なアメリカのPIという雰囲気で、とても気さくで⼈柄も良く、なおかつ⾃分の研究と⼈⽣を⼼ の底から楽しんでいるという様⼦がうかがえて、私も⼀緒に楽しいひと時を過ごすことができました。アメリカのPIには、穏やかで⼼に余裕のある感じの⽅が多いのですが、⽇本には少ないような 気がします。成果、予算獲得、ポジション獲得に追われて日々生活していることは、⽇本もアメリカもそれほど変わらないはずなのですが、この違いは⼀体どこから⽣まれるのでしょうか。アメリカに留学したころからの疑問です。

 

畠通信:早⽔君来訪(2011年12月16日)

元ポストドクターの早⽔君が、アメリカから⽇本に帰ってきたついでに研究室に顔を出しました。久しぶりにお会いし、彼の研究を聞くと、相変わらずアグレッシブかつエネルギッシュにいろいろとやっているようです。JSTのさきがけにも採択され、今後の活躍が期待されます。アメリカ⽣活も長くなり、3年経っているので、そろそろ⽇本に帰ってきて⾃分の城を構える頃でしょう。そういうことを踏まえて、就職活動や⾯接などにおける⼼構えや考え⽅など、限られた時間の中で精いっぱい伝えられることを伝えた後、午後にはTIA関連のシンポジウムでの招待講演を行うため、筑波⼤学へ移動しました。

 

畠通信:晴耕⾬読⽂庫(2011年12月14日)

もうひとつ、最近、研究員の⾃⼰啓発のために、⻑期ビジョンチームに関わって以来読み進めてきた様々な書籍をチーム内に提供し、「晴耕⾬読⽂庫」という⽂庫を開設しました。これも、前に紹介したGoogle Appsの中のGoogleドキュメントを使って、貸し出し簿や書籍⽬録を、ボタンひとつでチームの全員に共有できるという、とても胸がワクワクするようなことができます。有名なところでは「7つの習慣」や「⼈を動かす」、最近の売れ筋では元東レ取締役の佐々⽊常夫さんの本から、禅を使った体のゆがみを直す⽅法や断捨離の本まで、様々な本をならべています。さて、この⽂庫を運営し始めて1、2週間経ちますが、誰も本を借りてくれません。わずかに貸し出されたのは⼀冊のみで、結構な労⼒を費やして準備したにも関わらず、研究員のリアクションのなさに⼤変がっかりです。まあ、研究員のためにと思って色々やっても反応が全くなく、鳴かず飛ばずに終わるのはよくあることなので、これもひとつ勉強になったということでピリオドを打つつもりです。⾃⼰を不断に向上させ、常に前向きかつポジティブに勉学に勤しむことは、現代社会における知的労働者の原理原則であると、私は思っているのですが、多く⼈にとってはそうではないのかもしれません・・・し、並べた本がまったくもって面白くない、これっぽっちも興味がわかないのかもしれません・・・または、恥ずかしくて借りられないのかもし

れません。いずれにせよ、このブログを読んだ⽅は、⼤⾄急⽂庫に直⾏し、今すぐ本を借りなさい!

 

畠通信:Google Apps(2011年12月12日)

ずっと⼼の話題ばかり続いたので、たまには研究室の話を(こっちが本題なのですけれど)。少し前に、Google Appsという、クラウドコンピューティングベースのグループウェアを導⼊しました。従来から装置の管理などのためにサイボウズを使っていたのですが、時間管理やコミュニケーションのツールとしては少々物足りないところがありました。私は昨年の暮れからGmailとGoogleカレンダーを使い始め、その威⼒を⼗⼆分に実感していました。しかし、無償のGmailとGoogleカレンダーは、個⼈で使うのにはいいのですが、チーム全体で使⽤するには、おそらく意図的に設けられていると思われる様々な落とし⽳により、⾮常に不便です。それら(意図的に設けられた様々な落とし⽳)を全て解消したのが、有償のGoogle Appsで、様々な企業に導⼊されているそうです。実際にこれを使うと、みんなの計画とスケジューリングを⾮常によく⾒渡せる上に、電⼦メールとの連携も抜群で、私個⼈は⾮常に満⾜しています(チームのみなさんがどう思っているかは知りませんが)。

 

畠通信:ストレス軽減(2011年12月9日)

こうして、「気付く⼒」「集中⼒」を育てていると、過去や未来を⼼配することがなく、とても穏やかな気持ちになってくるので、⾮常にストレスが減ります。ここ20年以上、お酒が⼤好きでいつも飲み過ぎ、減酒に努めようとしても、なかなか思うようになりませんでした。ところが、⼼を育てる訓練をするようになってから、減酒どころか全くお酒を欲しいと思わなくなってしまいました。逆にアルコールを飲むと平穏な⼼や、集中⼒・気付きの⼒も失われてしまうので、とても不愉快に感じられます。そんなわけで、今は全くアルコールを飲まない⽣活をしています。例えれば、⻭が痛い⼈(ストレス)に⿇酔を打つ(お酒)ととても楽だと感じますが、健康な⼈(ストレスなし)に⿇酔を打つと、感覚が麻痺して気持ちが悪いと思うのと似ています。同様に、テレビも全く⾒なくなりましたし、雑誌を⾒たり、⾳楽を聞いたりしなくなってしまいました。昔は、食べ物も⼼の思うままに食べていたのですが、気付きの⼒によって、体が欲する量のものを食べることができるようになりました。最近は体重も順調に減少していて、⼼⾝共にとても良い状態になってきました。

 

畠通信:集中⼒を育てる(2011年12月7日)

次に、「集中⼒」を育てるということについて。実は、我々は集中しているようでも、⼼は常に⾼ 速で動き回り、集中対象から逸脱してしまうのですね。そこで、⾮常に集中しづらい呼吸という対象に⼼をはりつけるという訓練をすることで集中⼒を高めていきます。これによって、⼼があちこちにさまよいでることが少なくなり、現在何をやっているのか気付きやすくなるとともに、全ての作業で集中⼒が抜群にあがり、早く、効率よく、無駄なく物事が済んでしまいます。元々、私は集中⼒がある⽅で、仕事も効率よくやっていたと思っていたのですが、気付きの ⼒を持って、よくよく見るとなんのことはない、⼼はいつもさまよいでて関係ないことを考えたりしていることが多く、まだまだ無駄な時間を過ごしていたのだなあと、改めて気付かされました。そういうものを極⼒排除して、仕事にきっちりと⼼をはりつけることができると、どんどん仕事が進むということがわかりました。論⽂を書いていても、タイプするより早く⾔葉がどんどん出てきて、横にいる⼈が全く追い付けないくらいの速度になることもあります。

 

畠通信:ING(2011年12月5日)

今やっていることに⼼をとどめておけると、全ての現在⾏っている物事(ING)から大きな幸せと満⾜感を得ることができます。例えば、⾒慣れてしまって、⽬に映っていても⼼にとどめることができなかった景⾊を、常に新鮮な気持ちで見られるようになり、「いやあ、筑波って本当に緑が多くて、とっても気持ち良くて美しい都市なんだなあ」ということを毎⽇実感し、さわやかな気持ちで通勤ができます。海外旅⾏などに行くと、初めて見る景色にとても感動したりしますが、現地で住んでいる⼈はそういうことは感じないわけです。つまり、今は、いわば毎⽇海外旅⾏をしている気分になります。この状態を、過去の賢⼈たちはさまざまな名⾔で表現しています。例えばケーリー・グラントは「私の⽣活は極めてシンプルです。朝起きて夜寝る、その間は最善を尽くすということです。」と書き記しています。これはまさしく、今、毎⽇起こるINGに⼼をとどめて今現在に⾃分のベストを尽くすということだと理解しています。また、千⽇回峰⾏を2回行った酒井雄哉⽒は、回峰⾏で1⽇最⼤80kmも⽐叡⼭中を読経しながら 歩き回り、毎⽇だめになった草鞋を軒下に連ね、「1⽇1⽇が、これすなわち⼈⽣であり、⾃分は朝起きた時に⽣まれ夜寝る時に死ぬと考えれば、24時間を精いっぱい⽣きていこうと思う」と、著作で述べています。これなども常に⼼をINGに置く生き方であるというふうに、私は感じました。千⽇の修⾏の途中で未来のことを⼼配したら、きっと修⾏を完遂することはできないが、⼀⽇⼀⽇の積み重ねの結果として、千⽇回峰⾏を行うことができるということなのでしょう。

 

畠通信:気付く⼒(2011年12月2日)

前回申し上げた「気付く⼒」とは、今、⾃分が何をしているかということを常に認識する⼒です。現代⼈は多くの時間、何か考え事をしていますが、実は「⾃分が考え事をしている」こと⾃体を認識していません。考えは様々な過去のこと、未来のことにおよび、色々な⼼配や雑多な思いつきをし続けてしまうというわけです。それにまず気付くということが第⼀歩です。そしてさまよいでた⼼を、今、実際やっていることにつなぎとめます。それによって過去のことを憂えたり、未来のことを⼼配したりせずに、現時点に⼼をとどめておくことが可能になってくるのです。⾃分の⼼が 何をしているのか気付く、というのは全く初めて知った概念でした。これまであるがままに⼼が暴⾛するのを全て放置していた、ということでしょう。それがいかほどのストレスを知らず知らずに⽣み出していたか、思い返してもぞっとします。「気付く⼒」によっ て、私の場合、常に未来のことを考え、今⽇あれを、明⽇はこれをやらなければならない、今週はこれを達成しようと、いつもいつも考えていたとわかりました。これは現代の⻄洋⽂明の特徴で、多くの⼈、特に頑張っている⼈はそうではないでしょうか。その結果として、今、⾃分が何をやっているのかという集中⼒と気付きが薄くなってしまいます。⼼が未来にさまよっているので、常に焦り、じたばたと落ち着かない状況に陥ってしまいます。そのことに改めて気づかされました。

 

畠通信:⼼の育て⽅(2011年11月30日)

具体的に、⼼の育て⽅として何をやっているかといいますと、三つの⼒を育てています。ひとつは「気付く⼒」、もうひとつは「集中⼒」、そして「思いやりの⼼」。たったそれだけです。それを、体を鍛える時に筋トレをするように、しっかりと時間をかけて鍛えていきます。あまりの簡単さとばかばかしさに「えっ」と思われるかもしれませんが、実はこの3つの⼼の⼒を育てることは、とてもとても奥の深いことで、今⽬指している⼼のあり⽅と⽣き⽅を実現するためには不可⽋なのです。

 

畠通信:納得のゆく⽅法をさがして(2011年11月28日)

⼼を育てる⽅法というと皆さんは何を思い浮かべますでしょうか。例えば宗教でしょうか。最初に神ありきで、神様にお祈りをするような考え⽅は、そもそも神様がいるのだろうか?と研究者らしい疑問が生じてしまい、私にとってはなかなか受け入れることが難しいやり⽅です。検証不可能な絶対的な存在を仮定しないで、 あたかも筋トレのように⼼を育てる⽅法がないかと調べた結果、そういうのがあるのですね、しかも⼤昔から。ただ、私がたどり着いた⽅法は残念ながら、⽇本ではあまり知られていません。このやり⽅は、研究者の私にとっても理知的で納得がゆき、その効⽤は抜群なのです。巷には⼼の問題を取り扱う種々雑多なやり⽅があり、私がたどり着いた⽅法は、⽇本でも名前は極めて有名なのですが、その実践法はあまり普及していません。この10年ぐらいでほんの少し⽇本にも導⼊されてきたというところでしょうか。数奇な偶然が重なり、私はこの⽅法に運良く(と⾃分では思っている)巡り会いました。

 

畠通信:⼼技体(2011年11月25日)

ある事件をきっかけに某知⼈からアドバイスをうけ、「⼼技体」について考える機会がありました。そして、今までの⼈⽣において、⼼技体のバランスが極めて悪いということに気づかされました。例えば、若い時からの運動を通じて「体」は鍛えてきました。このごろは⽇記でも紹介しているように、様々な時間管理の仕⽅、研究のやり⽅、⼦育てなどを追及し、⼈⽣を⽣きる「技」を磨いてきました。それに対して「⼼」の⽅は全くあるがままに放置していて、全く鍛えていないということに気づかされたわけです。そこで、様々な技の開拓も⼀段落したこともあり、⼼の鍛錬と育成に真剣に取り組むことにしました。取り組み始めたのは9⽉で、かれこれ2カ月が経つのですが、取り組みも本格化してきて成果もあらわれてきたので、追々、この⽇記でも紹介していきたいと思います。

 

畠通信:CREST中間評価(2011年11月14日)

引き続き、CRESTプロジェクトの中間評価が⾏われました。プロジェクトをいくつもやっていると、沢⼭の評価や関連する 仕事で常に忙殺されるわけですが、今回は、研究代表者の私⼀⼈が領域の委員の皆様に、質疑応答を含めて1時間程度でお話しするという内容です。CRESTも折り返し地点を迎え、申請書に書いたとおり、いえ、かなり⼤幅な前倒しで研究は進んでいるのですが、だからこそ逆に、委員の方々は最終的な仕上げの形について気にかけていらっしゃるようで、結構厳しいコメントも色々と頂きました。正直なところ、どういう形でまとめるか、私⾃⾝もまだしっかりと思い描けていないので、これは今後の宿題のひとつということでしょうか。これが上⼿に描ければカーボンナノチューブデバイスの未来展望ももっと明確になると思っています。いずれにせよ、評価を 受ける側に⽴つと、準備その他も含めてかなりの労⼒を要します。あまり⼆週間ぶっ続けでやりたいものではありませんね。

 

畠通信:素⾯で打ち上げに参加(2011年11月10日)

キャパシタプロジェクトの最終評価会の後には、予想通り、それではみんなで⼀杯いきましょうか、ということになり、近くのレストランになだれ込みました。もしかしたらこのメンバーが⼀堂に会するのはこれが最後になるかもしれないなあ、と思いながら、私も参加しました。昔ならば、ここぞとばかりお酒をかっくらい、大いにしゃべり、酔っぱらってフラフラのていで帰宅したものですが、ここのところの⼼持ちの変化で、全くお酒を飲まない暮らしをしているので、ノンアルコールビールというものを飲みながら、素⾯での参加となりました。今までにない経験でしたが(何しろお酒好きだったため)、素⾯で皆さんの⾔動を聞いていると、飲み会の席というものを客観視でき、いろいろな発⾒があり、⼤変興味深かったです。時間が経つにつれて皆さまの声が少しずつ⼤きくなり、その場その場でぽっと花⽕のように打ち上げられた話題がじわじわと広がり、全員が共感しひとしきり会話が盛り上がると、また違う場でぱっと会話が⽣まれ、それがワサワサと花⽕のように広がっていく様⼦を冷静に観察していました。しかし 、ノンアルコールビールというのは結構美味しいものですね。まるでビールのような味がするので、アルコールが全く⼊っていなくても、結構酔っぱらった気分になれます。

 

畠通信:キャパシタプロジェクト最終評価会(2011年11月7日)

5年間にわたって⾏われ、今年3⽉に終了したカーボンナノチューブキャパシタプロジェクトの最終評価会が⾏われました。錚々 たる委員の皆様に評価していただくことになり、実施者の我々は戦々恐々、NEDOの担当の⽅も含めて何度も何度も打ち合わせや事前練習を行い、本番に臨みました。特に、中間評価で厳しく詰問された、コストの⾯からの実⽤化展望については、企業の観点からはコスト情報は提⽰できないのですが、最⼤限の努⼒をしました。何が起こるやらという⼼持ちで臨んだ本番ですが、蓋を開けてみると審査員の方々のコメントはとても好意的で、厳しい論戦になるようなこともなく、淡々と評価会は進み、無事に終了しました。最終評価をききながら、5年間で随分と研究が進捗したなあと、感慨深く思いました。しかしまた、キャパシタプロジェクトは随分昔のことだなあという気持ちも感じ、キャパシタプロジェクトは今年の3⽉に終了したばかりですが、もう私の中では遠い過去のものになってしまったことを認識しました。

 

畠通信:プレス発表3件(2011年10月24日)

先⽉から今⽉にかけて3件のプレス発表を⾏いました。これで今年、当チームからのプレス発表はあわせて5件という、かなりとんでもない数になってしまいました。プレス発表といえば、以前はNature、Science 級の学術論⽂の成果を、⼀般の方々にも興味を持っていただける形で発表し、三⼤紙への掲載を⽬指していましたが、今回は全く違うスタンスで臨みました。といいますのは、得てしてこういう⼤ネタは、アカデミアにおいては⼤変意味があるのですが、企業の方々から見ればサーカスの曲芸のようなもので、見て楽しむのはよし、しかし⾃分でそれをやろうとはなかなか思えないものが多いからです。例えば製造⼯程一つをとっても、企業の観点からすれば、具体的にはどう量産し、高い歩留まりで製造するのか、皆⽬⾒当がつかないものがどうしても多くなります。実は、先⽉と今⽉行ったプレス発表の研究テーマは、昨年度のオープンラボで様々な企業の⽅からニーズを聞き取り調査し、これならばスーパーグロースCNTの特⻑を⽣かし、かつ企業の⽅にも高い関⼼を持っていただけるのではと考えて設定したものです。そして、プレス発表も⼀般紙ではなく、⽇刊⼯業新聞等の専⾨紙への掲載を狙いました。⼀般の方々にはさして面白くなくとも、企業の専⾨家が⽬を輝かせるような、材料⾃体の優れた特性のみならず製造⼯程なども含めて実⽤化が容易にイメージできるような、そういったプレス発表ができたのではないかと考えています。

 

畠通信:オープンラボ終了しました(2011年10月20日)

無事にオープンラボが終わりました。期間中はご来場いただいたみなさまへの説明の他にも、企業との打ち合わせ、VIPの方々の視察対応、元研究員との打ち合わせなどで忙しく、あっという間に時間が過ぎ去っていきました。今回は特に、実証プラントで作製したカーボンナノチューブをボトルに詰めて⼈間の背丈ほどに積み上げた「スーパーグロースサンプルタワー」や、プレス発表した3種類の複合材料のA4サイズ・反物スケールでの試料など、実物展⽰にもかなり⼒を入れました。その甲斐があってか、企業 の皆様から、本気で実⽤化に取り組みたいというお問い合わせが複数あり、手ごたえを感じています。特にチタン並みの熱伝導性を持つカーボンナノチューブゴム複合材料が、ひと際関⼼を集めたようです。

 

畠通信:ナノ材料リスク評価国際シンポ その2(2011年10月14日)

もうひとつ、シンポジウムで印象に残ったことは、世界中のナノ材料リスク評価に関わるトップクラスの研究者が⼀堂に会したということです。その中には、気管内吸⼊試験でカーボンナノチューブの最⼤無毒性量(NOAEL値)を発表した三⼈の⼤御所先⽣もいらっしゃいます。NEDOプロジェクトの成果として二つのNOAEL値が提⽰され、いわば、現在わかっている世界中の全NOAEL値が集合したその中で、中⻄⽒は、ナノ材料の毒性は⽐表⾯積の⼀軸であらわされるという持説を、他の研究者の成果も全て織り込んで、全発表が終了した⼆⽇⽬の最後の講演で示しました。海外の様々な研究者を集め、⾃分のプロジェクトの研究成果を詳細に紹介し、⾃分の提案する新しい研究⼿法で全研究者の結果を包含して提⽰するという⽅法は、戦略的にもよく考えられていて、カーボンナノチューブのリスク評価に関わる世界中の研究者の考え⽅の基準そのものがこの⼆⽇で大きく変わったと思います。⾃分の研究を世に知ってもらう、いや認めてもらうことは、研究者にとって、とても⼤事で⼤変なことなのですが、それに関する中⻄先⽣の豪腕、まさにおそるべし、と感服いたしました。

 

畠通信:ナノ材料リスク評価国際シンポ その1(2011年10月11日)

「⼯業ナノ材料の特性評価・リスク評価⼿法に関する国際シンポジウム」に⾏ってまいりました。これは、この通信で何度も書きました中⻄準⼦先⽣がプロジェクトリーダーを務められたNEDOプロジェクト「ナノ粒⼦特性評価⼿法の研究開発」の総まとめとして開催されました。ナノ材料のリスク評価に対する世の中の関⼼の⾼さを示すように、各会場とも満員です。その中でNEDOプロジェクトの成果が、全体像として初めて発表されたと思います。このプロジェクトの最初の頃、⾮公開の進捗報告会に出た時に、各研究テーマを別々に聴くとそれが何のためなのかわからないけれども、⼀⽇がかりで全部を通して聴けば、中⻄先⽣の思い描く壮⼤な構想がわかり、まるでジグソーパズルのようだと感じました。それから5年が経ち、その大きな構想に、緻密で素晴らしい研究結果が積み込まれた今、まるで、プロジェクト全体が精密画のような有様で、これを率いてきた中⻄先⽣の⼿腕に感嘆しました。新しい学問を作っていく⼈の真の実⼒を感じました。

 

畠通信:オープンラボでお待ちしています(2011年10月7日)

来週、10⽉13・14⽇に産総研オープンラボが開催されます。実証プラントによる本格的なサンプル提供を⽬前にした今年は 、かつてない規模と真剣さで取り組みます。パネル⼗枚を展⽰し、実証プラントの単層カーボンナノチューブを詰めた等⾝⼤のボトルタワーをはじめ、A4サイズ、A3サイズ、反物サイズの材料、リットルスケールの分散液など、企業の皆様に関⼼を持っていただけるよう、実物を多数展⽰しております。特に今回の⽬⽟としては、0.3重量%のカーボンナノチューブ分散⽔溶液、⾼伝熱性カーボンナノチューブゴム(プレス発表しました)、⼒学的耐久性に優れたカーボンナノチューブゴム(プレス発表しました)、低パーコレーションカーボンナノチューブ樹脂(来週プレス発表を予定しております)がございます。どうぞ皆様、奮ってご参加ください。

 

畠通信:集中⼒の出し⽅(2011年9月30日)

仕事を効率的に行うためには集中⼒が不可⽋です。私は昔から集中⼒が高いことを⾃分の強みのひとつとしていました。しかし、昔の集中⼒の出し⽅は、アドレナリン系・体育会系とでもいうべき、⾃分を興奮状態に追い込んでエキサイティングしながらバリバリ仕事をこなすというものでした。これは⼼⾝の消耗が激しく、⼀⽇の終わり頃にはヘロヘロで頭痛がし、帰って何もできない、という状況になります。ストレスも激しく、酒を飲んだり疲れが溜まりやすかったりと様々な弊害があります。このアドレナリン系の仕事の仕⽅をされている⽅は多いと思うのですが、若いうちはまだそれでいいとしても、年をとってくると、それではもちません。近頃、それとは別の集中の仕⽅があることを学びました。⾮常に静かな気持ちを持ちながらも現時点に極めて意識を集中し、その状態を続けて物事をこなしていくやり⽅です。アドレナリン系とは全く逆で、⼀切のアドレナリンを出す必要はありませんし、出してはいけません。こういうやり⽅のほうがアドレナリン系よりも高い集中⼒と持続⼒で物事に取り組めるということが分かってきました。なおかつ、これはずっと続けていてもあまり疲れない、ストレスも溜まらないという、とてもありがたい効⽤もあります。アドレナリン系の⽅法は基本的に怒りに立脚しており、その怒りは様々なストレスの形で⾃分を傷つけるのみならず周囲の⼈にも多⼤な被害を及ぼします。⽅や、この静寂系の⽅法はとても静かな気持ちの上でなされるもので、⾃分も他⼈も傷つけることはありません。この静寂系の物事のやり⽅というものを今後、突き詰めていこうと思っています。

 

畠通信:タキオン粒⼦!?(2011年9月27日)

タキオン粒⼦がついにやってきた!ニュートリノが光速よりも速い速度 を持っているという先週末のニュースには、本当にびっくりしました。過去にも、左回りと右回りの独楽では重さが違うとか、第五の⼒を発⾒したとか、常温核融合とか、こういうとんでもない発表はいくつか事例がありますが、どれもその後はなしのつぶてです。しかし今回の発表は、発表されているデータを見る限りにおいては⼤変もっともらしい数値が並んでおり、それほど究極の無理をしなくても測定できそうな事象だという気がします。また発表者はCERNや名古屋⼤学理学部で、彼らの名誉をかけてあらゆる⾯から検討し尽くし、研究者⽣命を賭する覚悟で発表しているのでしょうから、なんとなく信憑性が⾼いような気がします。さて、光速以上の速度をもつ粒⼦は数式上すでに存在していました。粒⼦の質量は速度が上がると増加し、光速において無限⼤になるので光速をこえることができないというのが相対性理論ですが、その数式をひっくりかえすと全く逆の粒⼦、すなわち速度が上がれば上がるほど質量が減る粒⼦が出てくるのです。数式的には我々の実世界と鏡像のように存在しうる世界です。なんでこんなことを知っているのかといえば、中学⽣時代に沢⼭読んだブルーバックスの中に「超光速粒⼦タキオン―未来を見る粒⼦を求めて」という本があって、そこに描かれたタキオン粒⼦の世界に、中学⽣ながら、とてもわくわくしたことを三⼗年たった今も覚えているからです。従来の常識ではタキオン粒⼦は我々の実世界と相互作⽤できないということでしたが、質量を持つのに速度はほぼ光速に近く、しかもいかなる物質ともほとんど相互作⽤しない、昔から怪しげで謎めいていたニュートリノがタキオン粒⼦の世界と我々のリアルワールドをニュートリノ振動しながら行き来しているとするならば、さもありなんと思う次第です。タキオン粒⼦は、未来から過去に時間を逆⾏しているとされているので、タキオン粒⼦で作成した、タイムマシンも存在するかも(でも⾃分がそれに乗っても⼀緒に移動出来ませんな、いや、タキオン界から⾒たら、この世の物はすべて、未来マシン?)最近化学の仕事ばかりしている私が、⾃分が物理学者であったことを思い出すような、そういう衝撃的なニュースでした。

 

畠通信:東京での単独の講演(2011年9月16日)

東京で講演をする機会がありました。業者が企画したセミナーでしたが、今回は初めての単独講演で、ひとりで3時間半も話をすることになりました。このために研究室中の成果やなん やら、ざっとスライドをかき集めるとなんと400枚。ほとんど本のようになりました。3時間半の講演時間をもってしても400枚のスライドはとてもこなせないので、参加者の興味のありそうなトピックに絞ってプレゼンテーションをいたしました。しかし、3時間半の⻑丁場というのはやはり⼤変疲れました。江刺先⽣などは、よくこのように朝から晩までお⼀⼈でセミナーを担当されていることがありますが、おそるべきタフさだなと感じ入った次第です。今回の講演の中⾝を、研究室のメンバーに話す機会をいずれ持ちたいと思いました。

 

畠通信:ハーバードの思い出話 その2(2011年9月14日)

研究室時代はとてもスマートでかっこよく日々を過ごしていたと思っていたトムですが、久しぶりに会い、昔話に花を咲かせる中で、今回初めて色々な裏話を聴くことができ、彼も本当に色々と苦労してきたんだなあということがわかりました。特にびっくりしたのは、彼がベンチャーを立ち上げようとしているときに、ちょうどボスのチャーリーもベンチャーを立てようとしており、しかも同じ投資家から資⾦提供を受けようとしていたため、学⽣と先⽣が競合関係になってしまったという経緯です。彼は、卒業もさせないぞというようなことも先⽣から⾔われ、⼤変苦しい思いをしたということを打ち明けてくれました。それもありそうな話です。そんな訳で、彼はチャーリーと同じボストンに10年間暮らしていながら、ずっと疎遠になっていたらしいのですが、今年に⼊って初めてチャーリーを訪問したと⾔っていました。そんな彼から聞くチャーリーの豹変ぶりに⼼底びっくりしました。昔はもう「研究の⻤」。世の中にこれ以上厳しい先⽣はいないという程の厳しさで、全てを研究に捧げていたチャーリーですが、今はすっかり⼈も丸くなっており、研究の話はほとんどせずに⾃分の息⼦の話をずっとしていたそうで、時が流れたなあと感じました。息⼦の⾼校のレスリング部の顧問をし、息⼦のレスリングも指導したという熱の入れ込みようとのこと。しかし、息⼦が試合中に骨折してチャーリーに泣きついた時には、「⾻折の痛みに耐えられないようで勝てるか」と一喝し、息⼦は骨折したまま試合を続けたというエピソードを聞き、「そこだけ昔のチャーリーみたいだ」と⼆⼈でうなずきあいました。私もチャーリーには数年間お会いしていませんが、今年の冬にボストンに行く機会があったら、久しぶりに研究室に顔を出してみようと思っています。

 

畠通信:ハーバードの思い出話 その1(2011年9月12日)

トムの話が出たので、ついでにすこし昔話を。トムは、私がハーバード⼤チャールズ・リーバー研にいたとき、博⼠課程の学⽣でした。私の⽅が年上ですが、実は、彼からSEMの使い⽅や、ナノテクにまつわる様々なことを教わったので、いわば私にとって先⽣でもあります。その頃、彼のカーボンナノチューブ⼆本を⽴体交差させた構造でメモリスイッチを作るという仕事がサイエンス誌に掲載されていました。その上、彼は⾮常に美男⼦で、穏やかで話し⽅も丁寧で、⽇本では⾒かけないまるで貴族の⽅という趣で、ありとあらゆる⾯で格好良くスマートなのです。そんな彼がある⽇、興奮してラボでビーカーを振っている私のところに来ました。「どうしたの?」と訊くと、ハーバード⼤学のベンチャーを立てようとする学⽣達が投資家の前で⾏うコンペティションで⾦賞をとって500万円の賞⾦をもらい、さらに数億円のスタートアップ資⾦がもらえそうだという話でした。学⽣の時に事業化を考え、投資家にプレゼンし、数億円のお⾦を集めるなどということは⽇本では考えられないことで、「ああ、これがアメリカかぁ。」と強烈に記憶に残りました。それが10年前の話。彼はその後の10年間で、50億円の研究資⾦を使い、今は50⼈のメンバーで、この仕事を実⽤化しようとしています。彼と私のカーボンナノチューブに捧げた歳⽉がシンクロし、感慨深くこの10年を振り返りました。

 

畠通信:トム・ルーカス来訪(2011年9月9日)

ハーバード⼤学時代に同じ研究室に在籍していたトム・ルーカスが産総研を訪ねてきました。彼はアメリカのナノテロ社の創⽴者の⼀⼈で、カーボンナノチューブを不揮発性メモリとしてLSIに組み込む仕事をもう10年近く続けています。お会いするのも久しぶりで、彼の最近の動向も知らずにいましたが、話を聞いてみてびっくり、いかにも実⽤化⼨前という匂いがプンプンしています。技術的にはほとんど不可能と思える様々な課題を全てクリアしており、⼤変感動しました。私の⽅も簡単に我々のチームの仕事を紹介し、研究室の案内をいたしました。彼も⾮常に感銘を受けてくれたようで、「俺以外にも真剣にカーボンナノチューブの実⽤化を⽬指している⼈が世界にいるんだ」と⾔っていたのが印象に残っています。夜には⼀席を設けて久しぶりに飲みましたが、積もる話やカーボンナノチューブへの思いや、お互いに抱えている問題などで話は止まりません。特に私がスーパーグロース実⽤化のパートナー探しで企業行脚したと話すとすかさず「それはNIHだね」と⾔います。え?と聞き返すと「Not invented here」とのこと。直⾯する課題を言い表す⾔葉が英語にもあるほど、何かを実⽤化することに伴う困難さは万国共通なのだなあと思いました。

 

畠通信:TASC研修での講演内容(2011年9月2日)

さて、その講演ではまず、戦後60年、平和に栄えてきた⽇本のシステムが今まさに崩壊しかからんとしており、おそらくそう遠くない未来に必ず崩壊するであろうということを、各種統計データを⽤いて話しました。そして崩壊した後の⽇本で⼀層求められるのは、「成果」であり、成果を⽣み出すプロフェッショナルなビジネスパーソンとして⽣きていくためにどうすべきか、ということを問いかけました。そのうえで、成果に焦点を合わせたビジネスパーソンの 持つべきスキル、考え⽅について論旨を展開し、それらを今⽇から⾝につけていくためのアクションプランへと落とし込みました。このような考え⽅は、私がこの数年間マネジメント等について勉強してきたことの集⼤成とも⾔えるべきものです。もっとも、これは⼊⾨編に過ぎず、実践するための様々な考え⽅や取り組むべき課題があるのですが、またそれは別の機会にお話しできればと思っています。

 

畠通信:TASC合宿(2011年8月31日)

備忘録を続けます。産総研ではこの夏、電⼒消費量削減のために輪番休業制をとりました。これは各事業所を交代で⼀週間ずつ、強制的に閉鎖するというものです。その休暇を利⽤してTASCで研修合宿を行い、私 も講師として参加しました。TASCの若い、しかも多くが⾮常勤である研究員の方々に対して、何か彼らの役に立つようなメッセージをということで、研究の話は一切せずに、今後の⽇本の未来図および未来の⽇本においてどう生き残るべきか、論理立ててお話ししました。私としてはこのような内容の講演は初めてでしたが、準備も講演も、共に楽しく取り 組むことができました。

 

畠通信:学会発表本番(2011年8月29日)

NT11の発表を⼀⽣懸命準備したというご報告をしました。

本当は現地に⼊ってからも微調整や発表練習をするつもりだったのですが、なかなかそうはいきませんでした。ようやく発表当⽇の朝、本番の2時間前に初めて練習をしたところ、スライドの三分の⼀を過ぎたところで発表予定時間の30分を超過してしまいました。これではまずいと、急遽スライドを減らし、話すペースを調整して本番に臨みました。無事に発表を終わり多くの⽅からお声をおかけいただいたのですが、個⼈的にはなんだか今一つ、不完全燃焼の気持ちです。今後論⽂として発表する予定の多くの研究テーマを紹介したのですが、1テーマ当たり2、3分しか時間を割けず、⼗分に研究の中⾝が伝わったとは思えなかったからです。今、チームからは、すごい勢いで研究成果が生まれてきているわけですが、それを限られた時間の中でどう伝えていくか、ぜいたくな悩みだなあと思いつつも私⾃⾝の大きな課題として残りました。

 

畠通信:ケンブリッジ⼤学(2011年8月26日)

ついでに備忘録として、ご無沙汰していた間の事柄を書きとめておきます。学会会場の「ケンブリッジ」といえば、なによりまずケンブリッジ⼤学です 。ケンブリッジ⼤学からのノーベル賞受賞者は81⼈出ており、DNAのワトソンとクリックや引⼒のニュートンなど、歴史上の名だたる⼈物が学んだり教鞭をとったりした⼤学です。ケンブリッジ⼤学は何⼗もの小さなcollegeの集合体なのですが、その中で最も権威があり、古いトリニティカレッジに学会のレセプションで⼊る機会がありました。普段は⼀般の観光客が入れない場所です。ちょうど⼣暮れ時だったということもあるのでしょうが、青々とした芝⽣を古い建物が囲み 、これまでに経験したことのない、何百年にもわたって培われた学問の厳粛な雰囲気が漂っており、⼼の底から感銘を受けました。奥に進めば、まるで中世の魔法使いの修⾏場のような雰囲気。おとぎの国、ファンタジーの世界が広がっていて、21世紀に存在している場所とは思えません。嘘か本当か、ここでハリー・ポッターの撮影が⾏われたそうです。さもありなん。ここで思い⾄るのが⽇本の⼤学との違いです。⽇本の⼤学ではこれほど厳かな雰囲気を感じたことがなく、薄暗い、汚い廊下の印象の⽅が強く残ります。トリニティカレッジで学ぶのと⽇本の⼤学で学ぶのでは、この雰囲気だけで学⽣の学びに対する気持ちに圧倒的な差が⽣ずるのではと感じました。愛校⼼のみならず、⼈格形成や学問に対する取り組み⽅、全てにおいて違いが⽣ずるでしょう。そういう違いがノーベル賞受賞者の数に反映されているのかもしれません。⾃分の⼦供たちを⼤学に送るならばこういうところで学問を学ばせたいなあという思いを強くいたしました。

 

畠通信:多難なイギリス滞在(2011年8月24日)

しばらくご無沙汰してしまいました。NT11から約⼀カ⽉が経ちますが、旅⾏中はかなり⼤変な⽬に遭ってしまいました。

 

畠通信:NT11スライド完成(2011年7月10日)

NT11のスライドがいよいよ完成しました。30分しかない講演ですがスライド枚数は60枚強となりましたので、発表練習の段階で少し削らなければならないかもしれません。今回は、まだ論⽂になっていない内容を中⼼に組み⽴てています。紹介するトピックスが多いため、60枚以上のスライドを使っても、各トピックスにつき3〜4枚しか紹介できません。しかしこういう⼀個⼀個のトピックスを積み重ねていくと、我々スーパーグロースチームが単層カーボンナノチューブの実⽤化に真剣に取り組んでおり、それが近い未来に必ずや実現するだろうということが伝わるのではないかと思っています。当初の講演予定では、トリの前座(トリは昨年グラフェンでノーベル賞を受賞されたノボセロフ教授)のはずだったのですが、運よく私は初⽇の午前中に変更になりました。そのため、会期中に、講演を聴いてくださった方々の様々な反応を伺う⼗分な時間ができました。皆様からどのようなご意⾒がいただけるのか、⼤変楽しみにしています。

 

畠通信:NT11スライド準備 その2(2011年7月8日)

引き続きNT11のスライド作りを進めています。今学会のためのスライドを構成するにあたり、何 を⽬的として講演をするのかということを考え、そこから講演内容を組み⽴てるという新しい⼿法をとっています。まず、話をするトピックスを決め、全体の流れを決めて、おおまかなスライドを投げ込んだ後、少しずつブラッシュアップします。いわば、最初に全⾯を薄く塗り、何度も上書きをするという⼿法です。むかしは冒頭から最後まで⼀枚⼀枚作りこむ、逐次作業的⼿法をとっていましたが、それでは現在の⾮常に厳しい時間内に仕事をしているという状況では対応できません。上書きを重ねる⼿法ですと、極端なことを言えば、⼀度薄く描けた段階でいつでも講演ができます。経産省やプロジェクト運営で緊急の仕事が⼊って来ることに常に備えているうちに、このようなスタイルが⾝につきました。

 

畠通信:NT11スライド準備 その1(2011年7月6日)

もうすぐナノチューブ11(NT11 International Conference on the Science and Application of Nanotubes)がはじまります。これはカーボンナノチューブの研究者が⼀堂に会する世界で最も大きな国際会議です。このような国際会議は、通常パラレルセッションで⾏われることが多いのですが、NT11はシングルセッションのため、常に聴衆は数百⼈となり、発表のインパクトも大きなものがあります。今回は、海外の国際会議でしっかりとした講演をするのがほぼ約2年ぶりということで、発表も刷新しなくてはいけません。そのため、スライド作りに追われています。

 

畠通信:第五回研究交流会(2011年7月4日)

産総研の中部センターで第五回研究交流会が開催されました。これは産総研の各分野のグループ⻑以上の⽅がほぼ全員参加して、⼀⽇がかりで行う交流会です。10件以上もの研究紹介があったのですが、いずれも実⽤化を強く意識して研究が⾏われており、しかも多⽅⾯にわたり面白い話が多く、産総研の研究の裾野の広さと厚みを⼗分に感じる⼀⽇でした。また、研究室に引きこもりがちな私にとっては、いろいろの方々とお話をする絶好の機会ともなりました。できれば研究交流会のみでなく、研修という形で、皆様ともっと色々深くお話をしたいなあという気持ちを持ちつつ、猛暑の名古屋を後にいたしました。

 

畠通信:ボトルネック解消(2011年7月1日)

コアタイムが増えたこともあって、いろいろな仕事が⽚付きました。コアタイム制や時間管理などの取り組みをする前は、研究室内の論⽂や特許等、様々なところで私がボトルネックになっていました。「これではいかん」と考え、取り組みを始めて⼆年⽬で、ほぼ全てのボトルネックを解消しつつあります。あとちょっとです。過去においては、あれもこれもやらなきゃいけないと思うだけで多⼤なストレスになっていたのですが、今は⾮常に軽やかな気分です。しかも今後はその余った時間を⽤いて未来への投資をする時間ができそうなので、⼤変楽しみにしています。長く素潜りをしていたのが、やっと⽔⾯に顔を出せたという状況でしょうか。

 

畠通信:コアタイム新記録(2011年6月28日)

⼀昨年から「コアタイム」というものを設定し、その中で主要な仕事をこなしているということを紹介したかもしれません。もう⼆年近くでしょうか、ずっとコアタイムの記録をつけてきていますが、なぜか今⽉23コマものコアタイムが取れ、今までの記録を⼤幅に塗り替えました(平均は⽉13コマです)。大きな出張や雑⽤が少なかったということなのでしょう。コアタイム が増えると仕事は順調に進むのですが、コアタイムで行う業務は⼤概、極めて高いレベルの集中⼒が必要で、なおかつ頭もフル回転するので、それだけ疲れ具合もひどくなります。今⽉の睡眠時間は通常より確実に⼀時間長くなってしまいました。それでもいつも「眠い、眠い」と騒いでいたひと⽉でした。

 

畠通信:試料提供(2011年6月23日)

実証プラントやTASCで開発する様々な部材や試料をどのように提供するかということについては、産総研・⽇本ゼオン・TASC・経産省をまきこんで⻑きにわたる議論が⾏われてきました。これまで私はなるべくこの件には関わらないようにしていましたが、上司の鶴の⼀声があり、最終段階になって突撃命令を下され、参加することになりました。まず、交通整理をするために全ての流通経路をMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)になるように書き出しました。続いて、各流通経路において考えるべき項⽬を洗い出し、流通経路を縦軸に、項⽬を横軸におきます。このテー ブルに、はじめに「決まっていること」を書き込みます。次に、「きっとこうであるのが⾃然であろう」ということを書きこみます。全く決まっていない項⽬は空欄にします。これを打ち合わせ会場に持ち込んで、参加者みんなで表を作成しますと、わずか2時間程度の打ち合わせで、試料提供の⽅法を大まかに決めることができました。これをもって、本格的なスーパーグロースCNTの試料提供についても、ひとつのはずみがついたと思っています。現在、夏からの本格的提供を⽬指して細かい調整を進めています。

 

畠通信:震災後初の進捗報告会(2011年6月9日)

多くの新⼈も参加して、震災後初めて、チームの⽉例進捗報告会を⾏いました。このような困難な状況下にあるにも関わらず、チームのみなさんが大いに頑張って、⾮常に厳しい制約の中で着実に成果を出してきていることがうれしく、かつ頼もしく思いました。また、4⽉からチームに加わった新⼈の皆さんも、我々のチームの やり⽅に則して、何の違和感もなく発表しており、QCチーム活動や新⼈教育システムなどが⾮常にうまく機能しているなあということを実感しました。このように、チームがオートノミーで前進していく⼒を得ていることを、⼤変に嬉しく思っています。

 

畠通信:インテグラルカーボンナノチューブ(2011年6月6日)

シンポジウムでは「インテグラルカーボンナノチューブ」という概念を提唱いたしました。早速、⽇経BP Tech-On!に丸⼭⽒による記事が掲載されています。これは、スーパーグロースの量産技術開発が⼀回りしたことを受け、垂直展開でなく⽔平展開を狙った新しい試みです。「インテグラルカーボンナノチューブ」と は、⽤途に対して最適化された構造をもつカーボンナノチューブを最適な製造プロセスで合成し、⽤途開発企業をもつ独⾃のコアコンピタンスと組み合わせ、材料から⽤途まで、⼀連の製造⼯程を全てすり合わせた形でCNTの⽤途開発を進める、という意味です。カーボンナノチューブの分散性などの特性は、構造に⼤きく依存します 。そのため単⼀の構造のカーボンナノチューブを提供しているだけでは、全ての⽤途には対応できません。またモジュラー型の製造のみでは、必ずや新興国の追い上げにあい、価格競争に巻き込まれてしまいます。そこで、⽇本の得意とする、すり合わせされたインテグラル型の技術開発をカーボンナノチューブで試⾏していきます。

参考:Tech-On! 5⽉26⽇付「産総研、量産実証プラントで作製した単層CNTのサンプル品を配布開始」

 

畠通信:CNT-NMEMS-TIA共同シンポジウム(2011年6月3日)

5⽉25⽇にCNT-NMEMS-TIA共同シンポジウムが⾏われました。震災後の筑波での会議で、⼈が集まるかどうか⼼配でしたが、蓋を開けてみると会場は超満員で、⼤盛況のうちに開催されました。このシンポジウム、⼀⽇のうちに、江刺先⽣、飯島先⽣、中⻄先⽣と、私が尊敬 する先⽣⽅が講演されるということで、⼤変楽しみにしていました。私は、カーボンナノチューブのみ ならずMEMSの研究も少しやっているので、このシンポジウムで、カーボンナノチューブ関係者にも、MEMS関連の方々にも多くお会いすることができ、⼤変有意義な⼀⽇となりました。

 

畠通信:INC7にリモートで参加(2011年5月31日)

INC7という国際会議がアルバーニで開催されました。本来は筑波で開催される予定だったのですが、震災の影響で急遽⽶国アルバーニに変更になったのです。この会議は、ヨーロッパ、アメリカ、⽇本 などがアンダーワンルーフ政策やオープンイノベーションのあり⽅などを話し合う場で、各国の名だたる官僚・役員クラスのメンバーが参加されます。⽇本でいうならば内閣府・経産省・⽂科省・NEDO等の方々を始め、JSTやNEDOで大きなプロジェクトを運営している研究者が⼀堂に会する会議ということです。さて、その会議の中で、カーボンナノチューブの最近の研究についての招待講演を依頼され、初めてビデオで講演を⾏いました。さらに、質疑応答は国際電話で行うため、⽇本時間の朝4時に⾃宅待機です。指定された番号に電話をしてじーっと待っていると、突然「Hello, good evening.」と回線がつながり、質問を受けて回答をするという趣向です。たった5分間の質疑応答ですが、朝4時に頭を冴えた状態にしなくてはいけなかったため、前⽇の午後と講演後の午前中には大きな影響がありました。しかも、会場の様⼦などは⼀切分かりませんので、全く達成感がありません。できればこういう講演はしたくないものだなあと思いました。やはり国際会議は実際に出席してこそ、意味があるものですね。

 

畠通信:NEDO予算ヒアリング(2011年5月23日)

平成24年度のNEDO予算ヒアリングがありました。前⽇、ヒアリング⽤の書類を作成するための⻑時間の 会議の中で、その場で書類をどんどん作成し、修正し、当⽇NEDOに出かけました。予算ヒアリングに出席するのは初めてだったので、少し緊張していましたが、NEDOの方々は好意的で、なんとかカーボンナノチューブを実⽤化につなげようという観点から様々なご意⾒やアドバイスを頂き、とても有意義な会議になりました。震災の影響で、平成24年度予算がどうなるのかわからないところも多いのですが、無事に予算が確定してくれることを願っています。こういう⼤型の国家プロジェクトは毎年毎年財務省の査定を受け、単年度毎に予算編成が⾏われるので、研究者として負担と⼼労は⼤変なものがあります。最先端プログラムのように、研究基⾦を作っていただき、確定した研究費の下で複数年度にわたって安定して研究を続けることができたならば、と思うことがしばしばあります。そもそも研究開発は⻑年継続することが必要ですので、単年度の予算編成とは相性が良くないということなのでしょう。

 

畠通信:ナノエレクトロニクス研究部⾨全体会議(2011年5月20日)

私の参加している、GNC横⼭プロジェクトと深い関わりのある、ナノエレクトロニクス研究部⾨の立ち上げということで、その全体会議に出席しました。産総研のLSI・エレクトロニクスの研究者が⼀堂に会し、各チーム⻑が研究を紹介するという内容ですから、⼤変興味深く、充実した、面白い会議でした(様々な内職をしなくてすむのだったならば、もっと⾯⽩かったでしょう)。カーボンナノチューブをLSIに組み込むことは、まだまだ近い将来には実現しないと思いますが、おそらく遠い未来においては必ず実現する研究テーマであると思いますので、今後も引き続き、この分野の研究も細く長く、弾を仕込んでいきたいと考えています。

 

畠通信:GW明けの忙殺状態(2011年5月18日)

ゴールデンウィーク明けのスケジュールは凄まじいことになりました。会議中もせっせと内職です。朝から晩まで常に同時並⾏的に、書類を書 きつつ、プレゼン資料を作りつつ、どんどんメールを発射しつつ、論⽂を書きつつ、会議をこなす、という状況でした。ほうほうの体になりながらも、スケジューリングを駆使して、何とか乗り 切ったという感じです。

 

畠通信:健康促進事業(2011年5月9日)

⻑男が生まれてから三年半、⾃分のための時間はなかなか取れない状況でした。そこで、最近ちょっとだけでてきた余裕の時間を健康促進のために使うことにしました。この四年間余り、ほぼ全く運動していないという状況で、年も年ですから、体⼒が「低下」ではなく著しく「劣化」していて、危険⽔準まで落ちてきているということを、かなり前から認識していたからです。実は私は(今はまったくその⾯影はありませんが)、全⽇本ランカーになったほどのトライアスリートなのです。ということで、四年ぶりに⽔泳に出かけました。1000m泳いだのですが、その⽇、次の⽇は極度の疲労に襲われ、全くへろへろの状態になってしまいました。この状態からちょっとずつ運動強度を上げて体⼒をつけていくしかありません。気が遠くなるような話ですが、少しずつやっていくつもりです。

 

畠通信:⻄澤先⽣のバイオ電池(2011年5月6日)

震災前のことになりますが、共同研究者であり、CRESTの同じ領域で御一緒させていただいている、東北⼤学の⻄澤先⽣がスーパーグロースカーボンナノチューブを⽤いたバイオ電池の研究成果をJACSに公表され、プレス発表をされました。これは 、スーパーグロースCNTの間に酵素を入れてバイオ電池を作るというもので、スーパーグロースCNTは極めて⽐表⾯積が⾼いため、多くの酵素を担持でき、また酵素・CNT間の電⼦のやり取りの効率も⾮常に良いため、果糖による発電で従来の最⾼値を⼤きく上回る1.8mW/cm2の出⼒を得ることができたという報告です。これでまたスーパーグロースCNTを⽤いた⾮常に面白い⽤途がひとつ開発されました。スーパー グロースCNTの⾼⽐表⾯積に着⽬した研究テーマは、これまで100%、世界最⾼記録をたたき出していますので、皆さんもぜひこのカーボンナノチューブをご活⽤ください。

 

畠通信:会議づくめ(2011年5月2日)

震災後、妙に会議が多くなっています。カーボンナノチューブ応⽤研究センター、TASCのプロジェクト、GNCのプロジェクト等、私は色々なところに所属しており、それぞれのグループで安全会議や震災対策の会議が増え、各グループでみればそれほどの増加ではなくても、私は会議だらけになるという結果になっています。最悪の場合は、ほぼ同じ内容の安全に関する案件を、チームの会議、センターの会議、TASCの会議で何度も聞くことになってしまいます。個⼈的には、震災後の⼀番の被害は、⼦供たちの病気と、会議の増加による研究時間の逼迫である、という妙な具合になってしまいました。

 

畠通信:研究再開(2011年4月25日)

震災から⼀カ⽉以上が経ち、やっと研究再開にゴーサインが出ました。まだ様々な制約がある中での再開ですが、研究室中が研究ラインの立ち上げ作業に走り回っています。ゴールデンウィーク明けには、⼤分元通りの運⽤が可能 になってくると思っています。

 

畠通信:原発事故について その3(2011年4月6日)

情報がかつてない正確さとスピードで公開されていると書きましたが、公開される情報は基本的に過去、もしくは最速でも現時点で何が起きているかということがほとんどです。我々が最も興味がある未来のことについては公開されている情報は極めて少ないとしか⾔いようがありません。このことが、我々の潜在的な不安感を⼤きく増⻑していると考えています。最悪の事態がどんな確率で起き、どんな事象が発⽣するのか、全くわからないわけです。こういう未来も含めた情報公開を、国にして頂けるのが、国⺠の不安をおさえるには⼀番有効だと思いますが、おそらく、専⾨家同⼠でも様々な意⾒があり、国として未来への統⼀的な⾒解を示すということは極めて難しいのだろうと推察しています。科学の現場でも、ある事象をめぐって、その事象ばかりを研究 している専⾨家が100⼈集まったとすれば、100の異なる意⾒があるというありさまです。そうなると結局、個⼈個⼈が、信⽤できると思うリソースの情報や、⾃分で集めた情報を元に判断するしかないというのが現状かと思います。そして、この未来のリスクを考えるにあたっては、前に述べたような時間軸を考慮した判断がとても⼤事であると思う次第です。

 

畠通信:原発事故について その2(2011年4月4日)

今回の⼤災害は、インターネットが本格的に普及した後、⽇本で我々が経験する初めての⼤震災となるかと思います。このような災害時には「国が何か情報を隠蔽しているのではないか」と憶測し、それに基づいて事態を必要以上に重く考えてしまうことも多いかと思います。実際、そういう視点からちょっとパニックになったメールを複数の⽅から頂きました。しかし、インターネットの⼒とはすごいもので、これがなければ分かりようもなかった様々な情報が、リアルタイムで「⾒える化」されています。そういった背景のためか、私は個⼈的には、「国は⾃分達が知りうるかなり正確な情報を隠し立てせず公開しているのではないか」という印象をもち、感⼼しています。どこかで何かを隠蔽しても、様々なルートから⼊ってくる情報により嘘や隠蔽がすぐに明らかになってしまうという現代においては、情報をしっかり公開するしか選択肢がないのだと理解しました。これが、チェルノブイリの時との大きな違いであると感じています。情報が公開されており、各⼈がしかるべき正しい知識をもっているならば、リスクを評価して⾃分の思う⾏動をとれるのだというふうに思う次第です。

 

畠通信:原発事故について その1(2011年4月1日)

今回の震災で、特に不安視されるのはまだ行く末の⾒えない原発事故です。この原発事故のリスクについては、時間軸を考えることが必要だと思っています。新聞やニュースなどで次々と新しい汚染 が明るみになるのだけを見ていると、⼀⾒どんどん事態が悪化しているようにもとれますが、これらの汚染と事故は、その報道があった⽇に起きたわけではなく、調査が進んで事故の全容が明らかになるにつれ、以前から存在していた汚染が現在になってわかったものであると認識しています。つまり、私が判断する限り、現状では原発事故は継続しているにせよ、悪化しているということを示す事象はありません(どんどん爆発が起きているわけではない)。現状の事故レベルが続く限り、200km離れた筑波でクリティカルな影響が起こる可能性は極めて低いと判断しています。このように考えれば日々舞いこんでくる様々な深刻なニュースも冷静に受け止めて判断することができます。しかしながら原発の近くに住む方々にとって、現在明らかになりつつある汚染が深刻な問題であることは間違いありません。⼀時も早くこの災害が終息することを願ってやみません。

 

畠通信:⺠主党直嶋経産相御視察(2009年9月30日)

「きた、きた、きた︕」(私の⼼の中の声)

⺠主党の直嶋経産⼤⾂、副⼤⾂、政務官のトップ3が、予想通り、産総研に緊急視察に来られました。案件はもちろん、補正予算です。今回の視察では、産総研幹部の皆様のただならぬ緊張感が伝わってきました。⾦曜夜に緊急招集がかかり、打ち合わせは延々4時間にも及びました。週末も何10本ものメールが飛び交い、準備・対応は、かつてない真剣さで⾏われました。そして当⽇⽉曜⽇、私は現場での説明を担当しました。⾮常に厳しい質問等も想定していたのですが、実際にはそれほど厳しい質問はありませんでした。⼤⾂は技術⾯にも⼤変明るい⽅で、カーボンナノチューブ成⻑等について質問をされていかれました。下の写真は⼤⾂にカーボンナノチューブの成⻑を説明している私の写真です。今後どうなるかは全くわかりませんが、現場にいる我々としてはやれることは精⼀杯やった、ということでしょうか。

 

畠通信:凍結(2009年9月18日)

⺠主党政権がいよいよ立ち上がっていくわけですが、各種新聞等で報道されているように、それにそなえて補正予算の事業が全⾯的に凍結されました。これは我々も無関係ではありません。この事業が召し上げになるのか、それとも凍結解除されるのかで、今後スーパーグロースが実⽤化されるのかされないのか、大きく変わってくるでしょう。いずれにせよ悩んでもどうしようもない問題なので、私としては粛々とやれることをやるということに徹していこうと考えているわけです。

 

畠通信:⼆階経産相御視察(2009年9月15日)

先週は⼆階経済産業⼤⾂が御視察に来られました。政権交代間近ということで、視察前は「なぜこの時期に?」と、私も含め皆⾸をかしげていたのですが、実際に来られ、その後のご発⾔等を拝聴するに、これはもしかしたら、政権交代に備え、産総研を少しでもサポートするというご配慮だったのかなとも思っています。今後⺠主党は独⽴⾏政法⼈に対して⾮常に厳しい視点で挑んでくると思われていますが 、⼀⽅で25%⼆酸化炭素削減および科学技術政策の⼤事さを謳っているわけで、産総研がどういう⾵に扱われるのか、みなさん固唾をのんで⾒守っているところではないかと思う次第です。まあそんなことを考えていても仕事は進まないので、粛々とやらなければいけないことをこなしていくだけなのですが。

 

畠通信:フラーレン・シンポでの講演(2009年9月7日)

先週はフラーレン・ナノチューブ総合シンポジウムがありました。今回はつくばで開催ということで、久しぶりに参加させていただきました。3⽇⽬に招待講演を⾏いましたが、このために新規書き下ろしで80枚以上のスライドを、LSIの講演を聴きながら、せっせと内職して用意してきたわけです。⾃分でもわかっていたことではありますが、内容を盛り込みすぎ て、全部をお話することはできませんでした。ただ、この準備作業を通して、独⽴で進⾏している複数の研究テーマのつながりがよく見え、新しい研究テーマが4つも5つも浮かんだのが最⼤の収穫です。と申しますか、それも狙って⼀⽣懸命準備したわけですが・・・。講演を聴いて頂いた⽅には、満⾜していただけましたでしょうか。カーボンナノチューブの合成を 新しい軸から見てみるという趣旨の講演でした。

 

畠通信:LSI勉強会(2009年9月4日)

先週は「ナノテク製造中核⼈材の養成プログラム」にて、⼀週間LSIの勉強をしてきました。カーボンナノチューブをエレクトロニクスに組み込んでいくことは、今後進むべき道の⼀つとして大いに期待されています。このプログラムは、現在のエレクトロニクスの全体像を俯瞰するためのものです。講演者の多くが良く知っている方々だったため、少し気恥ずかしさを感じもしましたが、エレクトロニクス業界の⼀流講師による充実した講演が続き、大いに勉強させていただきました。かつての基幹産業だったエレクトロニクスも今は⾮常に厳しい話ばかりが聞こえてきますが、⽇本が伝統的に強い材料レイヤーからの変⾰によってイニシアチブをとれればなと思う畠でした。

 

畠通信:部分固体の論⽂(2009年9月1日)

ドンさんの部分固体の論⽂がNano Lettersに受理されました。この実験⾃体はほぼ数年前にやっていたのですけれども、私の不徳の致すところで、やっと今頃になって論⽂として公開になった運びです。まずはドンさん、おめでとう。最近はNano Lettersに掲載されるカーボンナノチューブの論⽂が全般的に少なかったので色々と⼼配していたのですが、また無事に⼀本の論⽂を送り出すことができました。まだまだカーボンナノチューブは健在だ。

 

畠通信:夏休み(2009年8月25日)

今年は8⽉上旬に、長い夏休みをとらせていただきました。⿇⽣政権の政策に乗せられて、週末1000円になる⾼速を利⽤して、⻘森まで出かけていき、東北三⼤祭を⼀週間かけて⾒てきました。⼤変楽しく充実していたのですが、⾞での移動が⾮常に長く、まるで私はタクシードライバーのようでした。そんなこんなであっという間に休みは終わってしまいました。

 

畠通信:最先端研究開発⽀援プログラム(2009年8月20日)

「最先端研究開発⽀援プログラム」という前代未聞のプロジェクトの公募がいよいよ本格的に始まりました。これは、研究費総額が2700億円で内閣府が主導するという類を⾒ないプログラムで、その透明性においても興味深い取り組みをしており、内閣府のホームページに全資料が公開されています。今回発表になった、11ページにわたる応募研究課題名を⾮常に面白く拝見させていただきました。さすがに超⼤型プロジェクトへの提案だけあって、⽇本の⼀流研究者が知恵を絞って大きな夢を描いたタイトルが並んでいます。例えば、「ゼロカーボン未来航空機」「時空を超える実世界移動マシーンの研究」「やる気の増進と⼼の健康維持」「⽇帰りがん治療の実現」と、⾮常に多岐多分野にわたる課題が提案されております。さて、この中から最終的に採択される約30件は、どんな課題なのでしょうか・・・

 

畠通信:メンバー異動(2009年8月11日)

7⽉いっぱいで4年間チームに在籍していた保⽥君が北海道⼤学の講師となって旅⽴っていきました。どうも長い間お疲れ様でした。こうして若い⼈達がうちのチームで⼤きく育ち、ステップアップしてキャリアを積んでいくということはとても良いことだなあと思っています。保⽥君も新天地できっとがんばってくれることでしょう。

 

畠通信:書籍紹介(2009年8月3日)

たまには研究と関係ない話ということで、最近読んだ本の紹介を。「アンティキティラ 古代ギリシアのコンピュータ」。これは2000年以上も昔に⾮常に複雑な天⽂時計が既に製造されていたということを示す本で、この数年間Natureに数本の論⽂が掲載されていたのでご存知の⽅もあるかと思います。この2000年前の⾮常に精巧で複雑な科学技術は、その後ほぼ完全に失われてしまい、1000年以上も科学の暗⿊時代が続くということになるわけです。この本はアンティキティラの機械をめぐる研究者たちの生き様を⾚裸々に描いた本であり、研究者というものの生き方を考える上でも⼤変興味深く、この猛暑の中、連⽇連夜東京に出張しているバスの中で⼀気に読み通してしまいました。みなさんも興味があったらぜひ読んでください。

 

畠通信:出張続き(2009年7月29日)

先週はこの猛暑の中ほとんど毎⽇のように東京に出張する日々が続き、⼤変にしんどかったです。しかしこれも予算を確保するためには仕⽅ない⾏事だとおもってやっています。

 

畠通信:有名マスメディアの取材(2009年7月24日)

先⽇はなぜか、ある有名マスメディアの常務取締役の⽅が、インタビューに来られました。電話がかかってきて迷⼦だというので「どこにいらっしゃるのですか」というと「産総研の⼊⼝です」とおっしゃいます。⾞で来られたようです。かけつけてみると⿊塗りの社⽤⾞。そして驚いたことにインタビューに来られた⽅は、鞄一つ、ノート⼀冊、ペン⼀本持っておらず、⾮常に⾝軽に颯爽と現れ、そして⼀時間余り、色々なことに会話が弾んだのでした。またその⽅の着ているスーツが格好よく、いかにも⾼級そうで、そのスーツにも⾒とれていた私です。いやあ、⽂化系のこういう⽅はとてもダンディで爽やかでかっこいいなあと思いつつ、いつものようにジーンズとワイシャツで対応している畠でした。

 

畠通信:ナノファイバー学会(2009年7月21日)

ナノファイバー学会という、少し異分野ですがナノチューブと関係のある学会に招待講演で⾏ってきました。これが⼤変レベルの高い学会で、招待講演者は産業の⽅、⼤学の⽅、ベンチャーの⽅など様々で、ナノファイバーという分野を俯瞰しつつ、特級の研究者の講演を聞けるという⾮常に興味深いものでした。私の頭の中で、従来ファイバーというとカーボンファイバーしかなかったので すが、この学会にきたことで、ナノファイバー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブファイバーが、連続的につながり、さらに大きな世界を俯瞰できるようになった感じです。とても勉強になりました。

 

畠通信:⼈間的魅⼒勉強中(2009年7月16日)

先週はとても偉い⼈との打ち合わせ・相談が続く⼀週間でした。ここで「偉い⼈」というのは、例えば⼀流⼤会社の取締役クラスの方々で、どなたも皆とても素敵なオーラを醸し出されています。お話する時にはまるでピンポンのようにスムーズで楽しい会話になりますし、⼈間的にとても魅⼒的な⽅が多く、ここまで上りつめる方々というのは、やはりすごいものだなあと思いながら、立ち居ふるまいから話し⽅、全てにおいて勉強させていただく良い機会になっています。

 

畠通信:新⼈職員採⽤⾯接(2009年7月14日)

今、産総研は新⼈職員採⽤⾯接が⼀週間かけて盛⼤に⾏われています。今年は我々のチームからもこの戦線に新⼈さんたちがトライしています。センター内でのゼロ次⾯接試験、部⾨での⼀次⾯接、そして理事⾯接という三段構えの試験を約2か⽉間かけてこなしていくわけです。この⾮常に厳しい戦いに挑んでいく中で、若者達が⼤きく成⻑していくというのも、またひとつ楽しみですが、こちらも練習、練習、練習ということで⾃⾝の能⼒・実力を問われる場であると思っています。彼らが無事に難関をくぐりぬけ、晴れて産総研のスタッフになれることを願っています。ちなみに当チームに在籍したポストドクターの三分の一から半分は産総研のスタッフの職を得ています。